インプラントコラム
COLUMN
インプラントで歯並びは治せるの?
20.08.27
稀に「歯並び悪いから、思い切ってインプラントにしようかな?」とご相談いただく
ことがあります。しかし、インプラントは歯並びを改善するためにおこなう治療ではなく、失った歯の機能を補うための治療法の1つです。今改善したい症状が、どの治療法に適応するのか、治療をおこなう前に把握しておくことが大切です。そこで今回は、インプラントと歯並びについて、詳しくご紹介して参りたいと思います。
インプラントは歯並びを治す治療法ではない
冒頭でもお伝えしたように、インプラントは歯並びを治すための治療法ではなく、虫
歯や歯周病で歯を失った際の治療法の1つです。
インターネットやテレビなどで「歯並びを整えるためインプラント治療をおこなった」と
目にする機会もあるようですが、不揃いな歯並びを整える治療は「矯正治療」です。
インプラントは、歯を支える役割のある歯槽骨に人工歯根であるインプラントを埋め込み、その上からアバットメントと呼ばれる連結装置とともに、人工歯となる補綴物を被せ、歯の機能を回復させていきます。
インプラントの人工歯には、ジルコニア、セラミックなどで形成された、機能性にも審美
性にも優れた補綴物が適応されます。そのため、インプラントを埋めることで審美性も得
られるイメージがあり、歯並びも綺麗に整えられると考える人も少なくありません。
しかし、あくまでもインプラントは、歯並びを整える治療ではなく、失った歯の機能を補
うためにおこなう治療です。
インプラント治療には外科手術が必要
インプラント治療はご紹介した通り外科手術を必要とし、歯肉に麻酔を注射した後、
メスで切開し、さらには専用のドリルで顎の骨(歯槽骨)に穴をあける施術をおこないま
す。
そのため全身管理が求められ、特定の持病がある場合には、インプラント治療を受けるこ
とが難しく、誰でも受けられる治療ではありません。
以下が、インプラント治療が禁忌とされている疾患です。
・糖尿病
・免疫不全
・放射線治療中
・白血病
・血友病
・チタンアレルギー
・重度の歯周病
・骨粗しょう症
・高血圧
・喫煙者
・歯ぎしりや食いしばり
・子ども
・妊婦
また、服用している薬によってもインプラント治療を受けることができない恐れもあるた
め、自身の疾患や服用している薬がインプラント治療に適応するか、主治医に確認を取り
ましょう。
自身の歯は大切に
インプラントは入れ歯やブリッシに比べると、咬合力(噛む力)の値が最も高く、自
身の歯を100%とすると、義歯は約30%、ブリッジは約60%、インプラントは約70%~85%
であると言われています。
咬合力が劣ると、硬い食べ物を噛み切れなかったり、食事を思いっきり楽しむことができ
なかったりすることもあり、自身の歯に勝るものはありません。
インプラントは「第2の永久歯」と呼ばれる程に画期的な治療法ではありますが、歯並び
を治すためだけに、自身の歯を抜くことは避けるべきでしょう。
矯正治療で歯並びを改善
インプラントは失った歯の機能を補うための治療法とお伝えしてまいりましたが、矯
正治療では、今ある歯を徐々に移動させて歯並びを整えていきます。
顎のサイズによっては、歯を抜歯することを余儀なくされることもありますが、基本は自
身の歯を、矯正装置を利用して正しい位置に移動させ、噛み合わせが合うように長期的な
治療計画を練りあげます。
矯正治療とインプラント治療の違い
2つの治療法の違いを確認しましょう。
▼治療の目的
・矯正治療は歯並びや咬み合わせを整えるために、歯を1年から2年ほどかけて、徐々に歯
を移動させていきます。
・インプラントは虫歯や歯周病によって失った歯の機能を回復させるための治療であり、
個人差はありますが、治癒期間を含め下顎で約6ヶ月、上顎で約1年と言われています。
▼治療法
・矯正治療は、ブラケットと呼ばれる矯正装置を歯の表面に装着し、ワイヤーを引っ張る
チカラを利用して、歯を正しい位置へと誘導していきます。また矯正治療は、マウスピー
ス矯正、裏側矯正などから治療法を選択することができます。
・インプラントの治療法は、1回法と2回法に分別されます。1回の外科手術でインプラン
トを埋める方法と、2回に分けてインプラントを埋める方法から選択することができます
。歯科医院によって取扱う治療法が異なるため、確認しましょう。
▼費用
・矯正治療では、先天異常の疾患があった場合のみ保険診療が適応され、その他の理由で
矯正治療をおこなう場合には全額自己負担となります。
・インプラントは、先天性の疾患のためにインプラント治療が必要になった場合や、第三
者による事故により広範囲にわたり顎を損傷した場合にのみ保険診療が適応され、虫歯や
歯周病で歯を失い治療を受ける場合には、全額自己負担となります。
▼適応条件
・矯正治療の場合は、子どもの歯と永久歯が混在する時期から、自身の健康な歯がある限
り治療をおこなうことができます。
・インプラントの場合には、歯を支える骨に問題があったり、持病がある場合、顎の成長
途中のお子さんなどは、インプラント治療を受けることができません。
口元の審美性を追求する治療法
歯並びを整えたいと考える患者さま同様に、「黄ばんだ歯を白くしたい」「歯の形が
気になる」そんな理由から、インプラント治療を受けたいとご相談いただくこともありま
す。
インプラント治療はこれまでご紹介してきたように、失った歯の機能を補うための治療法
であるため、「黄ばんだ歯を白くしたい」「歯の形が気になる」からといって、インプラ
ント治療は適応されません。
黄ばんだ歯をしろくするためには、ホワイトニング治療が適応され、歯の形を整えたい場
合には、ラミネートべニア、クラウン、カンタリング(歯冠形態修正)、ダイレクトボン
ディングなどの治療法が適応されます
以上今回は、インプラントと歯並びについて、詳しくご紹介してまいりました。イン
プラントは、歯並びを改善するためにおこなう治療ではなく、歯を失った際に機能を回復
するためにおこなわれる治療法です。「歯並びを治したい」と考える場合には、矯正治療
が必要となり、インプラント治療と矯正治療それぞれの治療の目的を把握し、理解するこ
とが治療への第一歩となります。改善したい症状がどの治療法に適応されるかご不明な場
合には、お気軽にご相談ください。