トラブルになりやすいインプラント周囲炎!インプラントの長持ちに大切なインプラント周囲炎の予防とは

22.05.26

せっかくインプラント治療をして、「しっかり噛んで食事ができる」喜びを手に入れても治療後の過ごし方によっては、インプラントのトラブルが起きる可能性があります。
また、インプラントは歯ぐきの周りにプラークや歯石がついたままになっていると、炎症を引き起こし「インプラント周囲炎」に進行することもあります。

インプラント周囲炎は進行するとあごの骨が減って、インプラントがグラグラしたり、最悪の場合抜け落ちたりしてしまうこともある怖い病気です。
インプラントを長持ちさせるため、長期間お口の健康を維持するためにインプラント周囲炎にならないことが大切です。
そこで、今回はインプラント周囲炎と予防法について詳しくご紹介します。

【インプラント周囲炎について】


インプラント周囲炎はかんたんにいうと「インプラントの歯周病」です。
その原因はご自分の歯で起こる歯周病と同じく、細菌感染により発生します。
しかし、天然歯に比べてインプラントは「歯根膜」というクッションの役割になる部分がないため、炎症への抵抗力が低く、炎症や骨吸収が急速に進むのが特徴です。

インプラントは手術前と手術後に気をつけなければいけないリスクファクターが存在します。

【インプラント周囲炎の手術前後のリスクファクター】


1 手術前のリスクファクター
インプラント周囲炎は手術後のケア不足によって起こるのですが、手術前の治療が不十分だったために起きる可能性もあります。

また、インプラント手術の時に埋入位置や被せ物がきちんと合っていないことで、汚れが除去しにくい部分が出て、このことから炎症を引き起こすことがあります。

そのため、手術前にインプラント周囲炎が引き起こされる原因を改善して、治療を開始することが大切です。
そしてインプラント手術後のケアやメンテナンスへのモチベーションを習慣化することにもつながります。

2 手術後のリスクファクター
インプラント手術後のリスクは、長い期間お口の中に汚れがついたままになってしまうことです。
インプラント周囲炎も歯周病と同じ「歯周病菌」によって引き起こされるため、毎日のブラッシングや定期メンテナンスを怠ると、インプラント周囲炎のリスクが高まります。

また、喫煙することでタバコの「ニコチン」や「一酸化炭素」は血管の収縮を引き起こして、酸素不足になり、インプラント周囲炎のリスクを高めます。

【インプラント周囲炎の進行別症状】


・健康な歯ぐき
歯ぐきが健康な状態は、歯ぐきの深さである「歯周ポケット」が3ミリ以下です。
見た目はピンク色で引き締まっています。

・軽度の周囲炎
歯周ポケットが4~6ミリ程度です。
歯ぐきの腫れや出血、歯肉の退縮が起こりはじめます。

・重度まで進行した周囲炎
歯周ポケットが6ミリ以上で、膿が出てくることもあります。
あごの骨も減ってしまい、歯を支える部分が少なくなって、歯がグラグラ動きはじめます。

インプラント周囲炎は重度まで進行すると、インプラントを摘出する必要が出てきてしまうこともあります。

【インプラント周囲炎の治療】

即日できる治療法
インプラント周囲炎は歯ぐきだけの場合と、骨の歯周組織まで進行しているケースがあります。
インプラント周囲炎は歯周病と似ている症状ですが、歯周組織の歯根膜がないため、炎症がダイレクトに伝わってしまい、周りの組織に対するダメージが強いのです。

・インプラント周囲粘膜炎のケース
インプラント周囲粘膜炎はインプラントの周りの歯ぐきだけ炎症が起きていて、骨吸収がない状態です。
さらに悪化しないように早期治療を開始する必要があります。
1 クリーニング
歯周ポケットや歯の表面の感染物質を丁寧に除去します。
また、汚れが着きにくくなるようにクリーニングを行います。

2 ブラッシング指導
「毎日のケアで汚れを取り除く」という基本的なことがインプラント周囲炎を安定させるために大切です。

3 メンテナンスの間隔の短縮
セルフケアの状況のチェックと歯ぐきの改善状況を確認するため、通常のメンテナンスより早めに来院していただきます。
症状が安定して、通常のメンテナンス頻度まで期間を延ばせることが目標です。

・インプラント周囲炎のケース
インプラント周囲炎は、炎症が骨組織まで進行している状態です。
病状や考えられる原因によって適した治療法を選択していきます。

1 徹底的なプラークと歯石除去
歯周ポケットが安定するように、プラークや歯石を徹底的に除去します。

2 細菌をコントロールする抗菌療法
インプラント周囲炎の原因菌である細菌を減らすために、抗菌薬の服用やレーザーなどでインプラント体の表面を殺菌します。

3 骨の再生などの外科的治療
重度のインプラント周囲炎になると、インプラントを支えている骨が吸収します。
骨は自然には元に戻らないため、骨の再生療法を行います。

【インプラント周囲炎の3つの予防策】


ポイント1 セルフケアの徹底
インプラント周囲炎で一番大切なことは、毎日の歯磨きでしっかり汚れを落としきることです。
当院では「正しいブラッシング方法」「患者様に合ったデンタルグッズの使い方」をお伝えし、毎日の歯磨きに取り入れていただくことで、セルフケアの質の向上させるように努めています。

ポイント2 定期メンテナンスの習慣化
手術後の経過が良くても、定期メンテナンスを怠っていると、セルフケアだけでは落とし切れない汚れが蓄積していきます。
担当医から指示された期間に定期メンテナンスを受けましょう。
定期メンテナンスでは、インプラントや歯ぐき、かみ合わせの状態を確認してあごの骨の診査を行い、インプラントトラブルを予防する処置や自宅でのケア方法をお伝えします。

ポイント3 生活習慣の改善
免疫力が低下すると、歯周病菌が増えやすくなり、インプラント周囲炎のリスクが高まります。
基本的なことですが、バランスの良い食生活や十分に睡眠取ることなどを大切にしましょう。
規則正しい生活習慣は病気になりにくい大切なポイントになります。

【まとめ】


インプラントの寿命は、インプラント治療後の生活に大きく左右されます。

特に、「セルフケアの充実」「定期メンテナンスの習慣化」はインプラント周囲炎を発症させないために大切なポイントです。
インプラント周囲炎の予防法を生活の中に取り入れて、治療した後もインプラントを長持ちさせましょう。