インプラントコラム
COLUMN
天然歯とインプラントが混在する口腔内での注意点とは?
25.05.30
「ブリッジの代わりに1本だけインプラントを入れたけれど、今後のケアが不安…」
「奥歯だけインプラントにしたけど、他の歯はまだ自分の歯です」
このように、インプラントと天然歯が混在する口腔環境は多くの方が抱える状況です。
近年、インプラント治療の普及により、部分的にインプラントを埋入するケースが増えています。
しかし、「天然歯とインプラントは構造や性質が異なる」ため、両者が混在する場合には特有の注意点があります。
そこで今回は、天然歯とインプラントが共存する口腔内で気をつけたいポイントをわかりやすく解説します。
インプラントと天然歯の“構造的な違い”を理解しましょう
比較項目 | 天然歯 | インプラント |
歯根膜 | あり(クッションの役割) | なし |
咬合力の伝達 | 柔軟性があり微調整される | 直接骨に伝わる |
感覚 | 圧力や痛みに反応 | 感覚が鈍い |
このように、インプラントは歯根膜というクッションの役割をする部分がありません。
そのため、衝撃をダイレクトに受けやすく、噛み合わせのズレに敏感です。
そこで、インプラントと天然歯との“ちがい”を意識して治療・メンテナンスを行うことが大切です。
注意点① 噛み合わせのバランスに注意
インプラントと天然歯が混在する場合、咬み合わせのバランスが崩れやすい点に注意が必要です。
天然歯には歯根膜があり、咬む力をうまく分散できますが、インプラントには歯根膜がないため、咬合力の負担が偏るとインプラントトラブルの原因になります。
噛み合わせは少しずつ変化することもあるため、定期的に噛み合わせを確認して必要であれば調整することが大切です。
・インプラント側だけに強い力がかかる
被せ物(上部構造)の破損
骨に負担がかかり、骨の吸収の可能性
・天然歯に負担が集中する
歯に負担がかかる・破折の可能性
そのため、インプラントを装着したあとも定期的な咬合チェックが欠かせません。
微調整を繰り返しながら、それぞれのより良いバランスを保つことが大切です。
注意点② メンテナンス方法が異なる
天然歯とインプラントでは特徴が異なり、メンテナンス方法にも違いがあります。
・天然歯
歯と歯ぐきの間に「歯根膜」があり、免疫防御機能が働いています
・インプラント
天然歯と比較すると歯周組織 との付着が弱く、細菌感染(インプラント周囲炎)すると進行が早い特徴があります。そのため、インプラント周囲炎の感染に注意が必要です。
インプラント周囲炎は、天然歯の「歯周病」と似ていますが、一度進行すると骨吸収が早く、インプラントトラブルの可能性が高いことが特徴になります。
そのため、インプラント部位では、特に以下のケアが重要です。
・磨き残しが出やすい部位とその磨き方の確認
・歯ブラシだけでは磨きにくい部分はフロスや歯間ブラシでの清掃
・歯科医院での定期的なクリーニング(PMTC)
注意点③ 歯ぎしり・くいしばりのある人は要注意
天然歯に比べて衝撃を吸収しにくいインプラントは、歯ぎしりや食いしばりによる力に弱いという側面があります。
歯ぎしりは寝ている時に行われていることも多く自分ではコントロールが難しいこともあり、「ナイトガード」というマウスピースを使用して歯や骨を守ることが大切です。
歯ぎしりや食いしばりの癖があると、以下のリスクが高まります
・インプラント体や被せ物(上部構造)の破損
・インプラント周囲の骨吸収
・天然歯のすり減りや破折
注意点④ インプラントと天然歯の“動き”の違いを考慮
天然歯は“動く”ことがあります。
矯正治療や加齢により、わずかですが歯の位置が変わることがあるのです。
一方、インプラントは骨と結合しているため一切動きません。
その結果、隣接する歯とずれが生じたり、咬み合わせの変化につながったりすることがあります。
そのため、治療後の口腔内変化を定期的にチェックし、必要に応じて被せ物の調整や補綴の再設計を行うことが重要です。
天然歯とインプラントが共存するからこそ、定期検診が必須
インプラントは“天然歯以上に繊細な管理”が必要な治療です。
インプラントには歯根膜がなく、免疫による防御機構も天然歯ほど強くありません。
そのため、細菌感染(インプラント周囲炎)や力の偏りによる破損に弱いのが特徴です。
また、インプラントと天然歯が混在している場合は、噛み合わせのバランスや清掃のしにくさなど、管理がより複雑になります。
だからこそ、歯科医院での定期的な検診とメンテナンスが重要なのです。
定期メンテナンスの特徴
・インプラント周囲のクリーニングと炎症チェック
インプラント周囲は、歯ぐきとの付着力が天然歯よりも弱く、プラークや歯石がたまりやすい構造になっています。
プラークをそのまま放置すると、インプラント周囲炎の原因になります。
当院では、専用器具を使ってインプラント表面や周囲の歯ぐきを丁寧にクリーニングします。
さらに、出血やポケットの深さなど炎症の有無も毎回チェックし、早期発見・早期対応を徹底しています。
・噛み合わせのチェックと調整
インプラントは動かない構造ですが、天然歯は加齢や力によって少しずつ位置が変わることがあります。
そのため、時間の経過とともに噛み合わせのズレや力の偏りが生じやすくなります。
当院では、毎回のメンテナンスで「咬合紙」などを使って噛み合わせを丁寧にチェックし、咬合調整を行うことで破損や周囲炎のリスクを軽減しています。
・患者様ごとのセルフケア指導
インプラントと天然歯の間や、インプラントの根元の段差などは磨き残しが起こりやすい部位は、磨き方のコツが必要です。
当院では、患者さんの口腔内の状態に合わせて、ブラッシング指導を行っています。
日々のケアが改善されることで、インプラントの寿命も大きく変わってきますので、分からないことはお気軽にご相談ください。
【まとめ】
インプラントと天然歯が混在する口腔内は、機能性・審美性の両方を高く保てる反面、管理の質次第でトラブルになってしまうこともあります。
重要な4つのポイント
・動かないインプラントとの“調和”を意識
・歯ぎしりや力のコントロール
・インプラント特有のケア方法
・咬合バランスの継続的な調整
しっかりと定期手的なメンテナンスで管理することで、インプラントも天然歯も長く健康に使うことができます。
毎日の正しいセルフケア大切なため、気になることや疑問があれば、お気軽に当院へご相談ください。