インプラントコラム
COLUMN
インプラントは若年層や妊娠中でも可能?治療開始のタイミングと注意点
25.09.25
インプラント治療は、失った歯を補う治療として広く知られるようになり、若い世代から高齢の方まで幅広い年齢層から関心を集めています。
天然歯に近い噛み心地や見た目が得られることから、「入れ歯やブリッジに抵抗がある」「長く安定して使いたい」と考える方に人気があります。
しかし、「10代や20代前半の若年層でもできるのか?」「妊娠中でもインプラント治療は受けられるのか?」といった疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
インプラント手術は、年齢や身体の状態によって治療が可能なタイミングと注意点があり、すべての人がすぐに治療できるわけではありません。
そこで今回は、若年層や妊娠中にインプラント治療を検討する際のポイントをわかりやすく解説します。
インプラント治療とは?
インプラント治療は、歯を失った部分に「インプラント体(人工歯根)」を埋入して、その上に土台を立てて被せ物をする治療です。
ほかの歯に負担をかけずに単独で治療をすることができ、固定式の治療のため、安定感があります。
インプラントの仕組み
インプラント体(人工歯根)
多くのインプラントはチタン製で、ネジのようなパーツを顎の骨に埋入して、歯の根の役割をします。
上部構造(被せ物)
セラミックやジルコニアで作られた被せ物
アバットメント
人工歯根と被せ物をつなぐ土台
この3つの構造が組み合わさることで、天然歯に近い噛み心地と見た目を実現します。
若年層におけるインプラント治療のタイミング
成長期にはインプラントが推奨されない理由
顎の成長途中にインプラントを埋入すると、顎の成長に伴い噛み合わせのバランスやインプラントの位置、角度がずれてしまう可能性があります。
そのため、インプラント治療は顎の骨の成長が完了してからでなければ行えません。
また、下記のようなリスクがあるため、顎の成長が終わったタイミングでインプラント治療が可能になります。
顎の骨が伸びてもインプラントは動かないため、歯列のバランスが崩れる可能性がある。
将来的に再治療が必要になる場合があり、患者様の負担が大きくなる。
周囲の天然歯との高さが合わなくなり、見た目や噛み合わせに違和感が出る可能性がある。
そのため、インプラント治療の可能な目安として18歳以降、顎の成長がほぼ完了した段階でインプラントを検討することが推奨されています。
若年層が歯を失った場合の一時的な対応
成長期に永久歯を失ってしまった場合には、以下のような方法で対応することがあります。
ブリッジ
両隣の歯を利用して、橋渡しのようにして人工歯を固定します。
※ただし健康な歯を削る必要があります。
部分入れ歯
取り外し可能で成長に合わせて調整しやすい特徴があります。
ただし、安定感が少なく、見た目が気になる場合があります。
矯正治療によるスペースコントロール
将来的なインプラントに備え、歯並びを整えます。
歯を失ったまま放置すると、左右の歯が少しずつ傾いてきたり、噛み合わせの歯が少しずつ伸びてしまったりする可能性があります。
そのため、何らかの治療が必要で、顎の成長を待つ間に上記の中から治療を行います。
顎の成長が落ち着いたタイミングで、インプラント治療が必要かどうか再検討する必要があります。
妊娠中のインプラント治療の注意点
妊娠中に手術を避けるべき理由
妊娠中はホルモンの影響で歯ぐきが腫れやすく、免疫力も低下しがちです。
さらにインプラント手術には以下のような要因があるため、母体や胎児に影響を及ぼす可能性があります。
レントゲン撮影のリスク
胎児への放射線の被曝を避けるため、撮影は極力控える必要があります。
局所麻酔や薬の使用
妊娠中は胎児への影響を軽減するために薬の使用が制限される場合があります。
長時間の診療姿勢
お腹が大きくなると、治療姿勢が母体に負担となる場合がある。
妊娠初期はつわりなどの影響で普段は問題ないことも負担になる可能性があります。
また、妊娠後期は診療台に寝る姿勢がお腹を圧迫して負担になる場合があります。
そのため、妊娠中のインプラント手術は原則行われません。
妊娠中にできること
インプラント手術は避けるべきですが、妊娠中でも以下の準備やケアは可能です。
クリーニングでお口を清潔に保ち、出産後の治療に備える。
母体に負担の少ない範囲で歯周病やむし歯の治療を行う。
インプラント治療に向けたカウンセリングや計画の相談。
妊娠中は体調の変化も多い時期のため、無理をせず、出産後に体調が安定してからインプラント治療を始めましょう。
出産後・授乳期のインプラント治療
出産直後は、赤ちゃんのお世話で生活リズムが大きく変化し、十分な睡眠や自分の時間を確保するのが難しくなることが多いでしょう。
そのため、長時間にわたるインプラント手術や定期的な通院を計画的に進めるのは負担が大きいケースが多いです。
さらに、授乳期には抗生物質や鎮痛薬などの薬剤が母乳を通じて赤ちゃんに移行する可能性があるため、使用できる薬の種類や量に制限がかかることもあります。
これは、インプラント手術後の感染予防や痛みのコントロールに関係するため、必ず歯科医師に授乳中であることを主治医にも伝えましょう。
一般的には、授乳がある程度落ち着き、母体の体力が回復してからインプラント治療を始めるのが安心です。
体調が安定していれば、手術中や術後のリスクも軽減できます。
また、通院や治療のスケジュールも赤ちゃんの成長に合わせて調整することが可能になります。
一方で、出産直後からでもできることとして、クリーニングや歯周病予防のケアを受けておくのは大変有効です。
清潔な口腔環境を維持しておくことで、将来的なインプラント治療をスムーズに進められる準備が整いやすくなります。
【まとめ】
インプラント治療は、天然歯に近い機能性と審美性を得られる優れた方法ですが、タイミングを誤るとトラブルの原因になる場合があります。
若年層は顎の成長が完了してから治療を検討する(18歳程度が目安)ことや妊娠中はインプラント手術を避け、出産後に体調を見ながら開始しましょう。
カウンセリングや定期的な口腔ケアは妊娠中でも可能です。
様子を見ながらお口の環境を整えていきましょう。
ライフステージごとにより良い時期を検討し、歯科医師と相談しながら治療を進めることが、インプラントを長持ちさせるための大切なポイントです。