基礎知識

若くても油断禁物!歯周病とインプラント治療について

19.02.22

歯周病は中高年に多い病気として周知されている一方、近年は20代で歯周病が進行しているケースも増えていることはあまり知られていません。

その歯周病はインプラント治療において、成功率や予後に影響するリスクファクター(危険因子)となっています。将来インプラント治療をお考えの若い方に、今回は歯周病とインプラント治療との関連について詳しくご紹介していきましょう。

若い人の歯周病が増えている!?

若い人の歯周病

厚生労働省は5年に1回、国民のお口の健康に関する調査(歯科疾患実態調査)をおこなっています。その直近の調査(平成28年)では、20代の歯周病の現状において以下のような点が明らかとなっています。

20代の約3割が『中等度』の歯周病

歯と歯ぐきの間にはもともと歯肉溝(しにくこう)と呼ばれる深さ1~2mm程度の溝が存在しますが、歯周病が進行するとその溝が深くなり歯周ポケットを形成していきます。この歯周ポケットの深さが歯周病の進行具合を知る1つの目安となり、3~4mmで『軽度』、4~6mmで『中程度』、6mm以上で『重度』と診断されます。
先の調査によると4~6mmの歯周ポケットを持つ20代の割合は3割近くにも及び、またこの割合は前回、前々回の調査よりも増加しています。同じ項目における40代の割合が4割程度であることを考えると、その割合が決して少ないものではないことがおわかりでしょう。

『歯肉炎』は歯周病の初期段階

歯周病は病状の進行具合によって『歯肉炎』と『歯周炎』に分類されます。歯肉炎は子供にもよく発生する歯ぐきの炎症であることから軽い病気にとらえがちですが、成人の歯肉炎は歯周病の初期段階であることをよく理解しておく必要があります。

歯周病の初期にあたる歯肉炎は、主な症状に「歯ぐきが赤い」「歯ぐきに違和感がある」「歯ぐきから出血がある」などありますが、いずれも症状自体は軽いものばかりです。さらにこれらの症状は若い人ほど治りが早く、「一時的な症状」として見過ごされてしまいます。しかしそのことが結果的に歯周病の発見の遅れやさらなる進行を招いてしまうので注意が必要です。

『沈黙の病』といわれる歯周病の恐ろしさ

歯周病の恐ろしさ

それでは歯周病とは具体的にどのような病気なのか、以下にまとめていきましょう。

歯周病は歯を失う原因の第一位

歯周病はその原因となる歯周病菌が歯ぐきに感染するところからはじまります。感染によって歯ぐきが炎症を起こすと、その弱っている歯ぐきからさらに歯周病菌は感染を広げ、次にその奥にある歯槽骨を破壊していきます。

歯槽骨の破壊が進むとやがて歯が支えきれなくなり、歯がグラグラと揺れだすほか最悪のケースになると歯が抜け落ちてしまいます。実際に歯周病は歯の喪失原因の第一位として名を連ね、50代以降になると歯を失う原因の半数を歯周病が占めるようになります。

気が付いたときには「手遅れ」なことも

先にも述べたように歯周病の初期である歯肉炎は症状が軽微なため、この段階では歯科を受診されない方も多くいらっしゃいます。しかし歯周病はその間にも進行を続け、「歯ぐきが腫れる・痛い」「歯がグラグラする」といった特徴的な症状がでる頃にはかなりの状態にまで進行しています。このように歯周病は『沈黙の病』と称されるほど症状があらわれにくく、「発見したときには手遅れだった」といったケースが多くみられる病気です。

歯周病が全身の病気を引き起こす

歯周病はお口の中だけでなく、体の健康にも悪い影響を及ぼします。例えばお口の中で増殖した歯周病菌が歯ぐきの血管から全身の血管へ運ばれると、血管内で動脈硬化を誘発して心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めることがわかっています。そのほかにも糖尿病や肺炎といった全身疾患への影響も明らかになっています。

妊娠前・妊娠中の女性も注意が必要

妊娠中はつわりなどによってお口の中が不衛生になりやすく、通常時よりも歯周病のリスクが高まるほか、女性ホルモンの影響である種の歯周病菌が増殖しやすくなります。ただ妊娠中の歯周病は早産や低体重児出産のリスクが高くなることが指摘されているため、すでに妊娠中の方やこれから妊娠をお考えの方は特に注意が必要です。

歯周病がインプラントに与える影響

歯周病のインプラントへの影響

歯周病はインプラント治療やその予後にも悪い影響を与えます。これからインプラント治療に臨まれる方、将来インプラント治療をお考えの方は、以下の点に十分注意しておきましょう。

歯周病だとインプラントができない?

インプラントはチタン製の人工歯根(フィクスチャ―)を顎の骨の中に埋め込み、その上に人工歯(上部構造)をアバットメントと呼ばれる連結部で固定する構造になっています。インプラント本体は人工物なので天然歯のように虫歯になることはありません。しかし周囲を骨で支えられているという点は天然歯と同様なため、インプラントも歯周病と似た病態を示す『インプラント周囲炎』を起こす可能性があります。インプラント周囲炎はインプラントを支える周囲の骨を破壊し、インプラントの動揺や早期脱落の原因になります。

インプラント周囲炎を起こした部位の細菌を調べてみると、隣接する歯ぐきに生息する歯周病菌と同種のもが検出されたという報告がされています。つまりお口の中に歯周病がある状態でインプラント治療をおこなえば、治療中または治療後にインプラント周囲炎を引き起こす確率が高くなるというわけです。このような理由から、歯周病のある患者様においてはインプラント治療の可否について慎重に考える必要があります。

インプラント治療前に歯周病と診断されたら

では歯周病だと絶対にインプラント治療ができないかといえば、必ずしもそういうわけではありません。実際にインプラント治療される方の中には、歯周病が原因で歯を失っている方も多くいらっしゃいます。また残っている歯に歯周病がある場合においても、ブリッジや入れ歯による負担を考えるとインプラントのほうが最良であると判断されるケースもあります。

確かに歯周病はインプラントの予後に多大な影響を与えますが、治療前に病状を改善しておけばそのリスクは軽減されます。もしインプラント治療前に歯周病と診断されたら、多少時間かかかっても先に歯周病治療をしっかりおこない、改善に努めましょう

インプラント治療後も定期メンテナンスを欠かさない

長い治療の末に入れたインプラントも、治療後すぐにトラブルに見舞われるようでは意味がありません。インプラントは治療が終わっても定期的なメンテナンスをおこないながら、インプラント歯周炎による動揺や脱落を未然に防いでいくことが重要です。くわえて歯周病のチェックや管理もおこないながら、お口の健康の長期安定を図っていきましょう。

定期的なチェックで早期発見・早期治療を心がける

定期的なチェックで早期発見

成人の8割がかかるといわれる歯周病は、比較的若い年代においても病状が進行しているケースがみられます。歯周病は初期の段階で治療しておけば重症化が防げる一方で、症状があらわれにいため発見が遅れやすく、それがさらに病状を進行させる要因になっています。
さらに歯周病はインプラントの予後に影響を与えるため、お口の中に歯周病がある状態ではすぐにインプラント治療が受けられません。若い方が歯を失った際にインプラントは最良の治療法となりますが、その原因が歯周病であるケースでは治療の終了までさらに長い期間を要することになります。
したがって「若いから」と油断することなく、わずかな異変を感じたら早めに歯科を受診し、さらに定期的なチェックで歯周病の早期発見・早期治療に努めましょう。

(参考文献)

・「平成28年 歯科疾患実態調査結果の概要」 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/62-28-02.pdf