基礎知識

痛みのないインプラント治療とは

19.03.13

機能性、審美性に優れているインプラント治療は、入れ歯やブリッジとは異なり外科手術を伴います。麻酔を使って治療を行うため体への負担は少ないものの、痛みを伴うのでは、と不安に感じる患者さんも多いのではないでしょうか。

ここで歯ぐきを切開せずインプラント治療を行う「フラップレス(無切開)手術」を中心とした、痛みのないインプラント治療についてご紹介したいと思います。インプラントを考えているけど痛みに不安を感じる方は、是非参考にして下さい。

インプラント治療に伴う痛みとは

インプラント治療に伴う痛みとは

インプラントは、外科処置によって歯ぐきを切開し、顎の骨にインプラント体を埋入します。痛みを感じないよう術前に麻酔をしてから外科処置を行うため、術中に痛みを感じることはありません。

しかし「外科処置」「手術」と聞くと、「痛いのではないか」「血が止まらなかったらどうしよう」など、患者さんにとって不安や緊張感などを感じてしまうかもしれません。
また虫歯治療の際に麻酔がなかなか効かず、痛い思いをした患者さんにとっては、ますます不安に感じることでしょう。

一般的なインプラント治療では麻酔がしっかり効いているのを確認してから処置を行うため、まず痛みを感じることはありません。手術時間も20分程度で終了し、患者さんの負担も少ないでしょう。

歯ぐきを切開しない無切開手術「フラップレス」とは

無切開手術「フラップレス」とは

一般的なインプラント治療では、麻酔後に歯ぐきを切開し、顎の骨を露出させます。そこへドリルで骨に穴を開けてインプラント本体を埋め込んでいきます。
一方フラップレス手術とは、あらかじめCTによる精密検査やコンピューターによるシュミレーションを使ってインプラントを埋め込む位置を決め、そこへ確実にインプラントを埋め込む最新のインプラント治療です。
サージカルステントという、インプラントを埋め込むためのガイドのようなものを作製し、歯ぐきを切開せずに正確に埋め込むことで、痛みをほとんど感じません。
ステントには、インプラントを埋め込むための穴が開いており、口腔内にまずステントを固定します。そこへ歯ぐきを切開せず、ステントに開いている穴にドリルを入れて直接顎の骨に穴を開けてインプラントを埋め込みます。
一般的なインプラント治療と比べて歯ぐきを切開しないため、手術後の腫れや出血、痛みなどを大幅に軽減することができます。また縫合も抜糸も行わないため、手術時間や治療回数を減らすこともできるため、患者さんにかかる負担が非常に少ない治療法と言えるでしょう。

また歯ぐきを切開しないことで歯ぐきの退縮を防ぐため、特に審美性を重視する前歯に適しています。どんなに美しいセラミッククラウンを被せても、歯ぐきが美しくなければせっかくの口元が台無しになってしまいます。
フラップレスなら歯ぐきに影響を与えずに治療を進めていくことが可能です。

フラップレス手術の流れ

フラップレス手術の流れ

ではフラップ手術によるインプラント治療はどのような流れで行われるのでしょうか。

1.各種検査

口腔内の写真、レントゲン撮影、CT撮影をします。その他噛み合わせのチェック、虫歯の有無や歯周病検査を行い、お口の中の精密検査を行います。
このときに模型作製のための歯型も採っておきます。

2.治療計画と説明

各種検査を行って得た結果から治療計画を作成し、患者さんに説明します。また治療期間や治療費の説明も行います。この説明で不安なことや疑問点があれば、納得いくまで質問しましょう。疑問を抱えたまま手術を受けるのではなく、ご自身が納得して手術を受けることが安心に繋がります。この時間を最大限に利用して下さい。

ステント作製のための歯型採取
フラップ手術の際に使用するステントを作製するため、歯型を採り、ステントを作製します。

3.虫歯、歯周病治療を行っておく

フラップレス手術を行う前に、虫歯や歯周病を治療しておきます。またクリーニングも行い、お口の中を清潔な状態に保ちます。
作製したステントを装着し、コンピューターで精査します。

4.フラップレス手術を行う

ステントを使い、直接ドリルで顎の骨に穴を開けてインプラント体を埋入します。歯ぐきを切開しないため縫合の必要もありません。通常のインプラントと比べると出血量も非常に少なく済みます。

5.結合期間

インプラント体を埋め込んだら、骨とインプラント体が結合するための安静機関に入ります。部位により異なりますが、骨との結合が確認できるまでおよそ3~6ヶ月程度要します。

6.人工歯の型取りと装着

インプラントの結合が確認できたらアバットメント(インプラント体と人工歯を繋ぐ連結部分)を取り付け、歯型を採取してセラミッククラウンなどの被せ物を作製し、できあっがったものを装着して治療は終わります。

フラップレス手術のメリット

・手術の痛みや腫れの抑制

一般的なインプラント手術と比べて歯ぐきをほとんど切開しないため、手術のときの痛みや歯ぐきの腫れを抑えることができます。

・肉体的負担の軽減

手術時間を短縮できるため、患者さんの肉体的な負担が少なくて済みます。

・手術時間の短縮

歯肉の切開や縫合を必要としないため、手術時間や治療回数が少なくて済みます。

・恐怖心の軽減

患者さんの外科手術に対する不安や恐怖心を軽減できます。

フラップレス手術のデメリット

・手術が出来ない症例もある

適応症例が限られるため、全ての症例に対してフラップレス手術が可能というわけではないのです。

・非対応の医院がある

術前のCT撮影やコンピュータガイドシステムによる診断が必要なため、どこでも受けられるわけではないです。

・治療に適さない人もいる

全身疾患がある方や服用している薬の種類によっては治療ができない場合があります。

無痛治療について

無痛治療について

インプラント治療を行う際には、局所麻酔を使って行われることがほとんどで、虫歯治療や抜歯などと同じ方法で行われます。
しかしインプラント治療に対して不安や恐怖心をお持ちの方や体に負担がかかりやすい方は、緊張感などから手術中に血圧の上昇などが起こることがあります。

そこで痛みを全く感じず、またリラックスして治療を受けていただくための「静脈内鎮静法」という麻酔を用いることがあります。点滴を使って麻酔を行うため、半分眠ったような状態でリラックスして治療を受けることができます。意識はありますが、治療中の痛みを感じることはほとんどありません。

安心してインプラント治療を受けるためには

安心してインプラント治療を受けるためには

インプラント治療は入れ歯やブリッジと異なり、外科手術を伴います。またインプラントの成功は歯科医院選びに全てかかっていると言えます。特に痛みに対して不安をお持ちの患者さんにも安心してインプラント治療を受けていただくためには、多くの実績と経験そして最新の設備を整えていることが望ましいと言えます。

特にフラップレス手術は非常に高度な技術を要する治療であり、フラップ手術の適応性を判断する判断力が求められることから、インプラント治療やフラップ手術の経験が豊富な歯科医師のみが行わなければいけません。

このように、痛みをほとんど感じないフラップレス手術をはじめとして、無痛治療や出血量が少ない治療が行える歯科医師のもとなら、安心してインプラント治療を受けていただけるでしょう。