基礎知識

インプラントと天然歯はどのように違うのでしょうか

19.05.23

失った歯の代わりとなるインプラントは、天然歯に近い噛み心地と言われています。外科手術により再び噛む機能を取り戻すことができるインプラントですが、天然歯とどのように違うのでしょうか。今回は、インプラントと天然歯を比較し、その違いについてお話をしたいと思います。

インプラントと天然歯の違いについて

天然歯は、その名のとおり自分の歯のことを言います。天然歯の場合、エナメル質、内部の象牙質、その内側にある歯髄という構造になっており、先端に根があります。
天然歯は虫歯などの感染症が起こります。また歯周病菌により歯を支える歯周組織に炎症が起こると、歯ぐきなどに炎症が起こり、さらには歯槽骨の吸収により歯を支えることができなくなって歯を失ってしまいます。
神経が通っているため、虫歯などで内部に炎症が起きた場合、痛みなどを感じます。細菌感染により炎症が神経まで達した場合は神経を取り除く「抜髄」という処置が行われます。神経を取り除くと痛みなどを感じなくなりますが、歯質は脆くなってしまいます。

いっぽうインプラントは「人工歯根」と呼ばれています。失った歯の代わりにインプラント体という人工の歯の根の役割を持つ部品を、外科手術により埋め込むことで歯の根として機能を取り戻します。これは入れ歯やブリッジにはない特徴でもあります。
人工歯根として埋入したインプラント体はアバットメントという連結部品を用いて、人工歯を装着することにより、機能と見た目を回復させます。
当然のことながら、人工歯は虫歯にはなりません。また歯質が脆くなることもありません。しかし歯周病菌により歯周組織に炎症が起こる「インプラント周囲炎」が起こる可能性を持ち合わせています。

天然歯にあってインプラントにないものとは

機能はもちろん、見た目も美しいインプラントは、一見すると天然歯と見分けがつきません。
しかし天然歯とインプラントには、先に述べたこと以外に大きな違いがあります。それは「歯根膜」という組織の有無です。
天然歯は顎の骨によって支えられており、その周りにはおよそ0.2ミリほどの薄い膜が付いています。この薄い膜がインプラントにはありません。では歯根膜はどのような働きがあり、歯根膜の有無によりどんな違いが生じるのでしょうか。次に歯根膜の働きをご紹介しましょう。

上部構造(人工歯)が欠ける

上部構造は人工の歯のため虫歯になることはありません。しかし噛み合わせが適切でない場合や歯ぎしり、食いしばりなど歯に大きく負担がかかる癖をお持ちの方は、上部構造が欠けてしまうことがあります。適切な咬合調整および悪癖の改善が必要です。

インプラント治療後の定期健診の必要性とは

噛んだときのクッションの役割

天然歯の周りにある歯根膜は、噛んだときの力を逃がすためのクッションのような役割を持っています。また歯根膜の周囲には繊細な知覚神経があるため、強い力がかかったときにその力を回避する能力も持っています。歯根膜が持つクッションのような役割は、噛む力をコントロールするうえでとても重要な働きを持っています。

感染に対する防御反応

天然歯の場合、歯根膜があることで周りの組織に血液を供給して栄養を補給しているため、感染に対する抵抗力を持っています。またセメント質と呼ばれる組織と歯肉が結合していることにより、細菌が簡単に侵入できないようになっています。つまり歯根膜があることで、細菌感染が起こりにくい状態であると言えます。

歯根膜がないインプラントの弱点とは

歯周病の説明

インプラントは人工歯根のため、歯根膜がありません。そのため噛んだときの力が直接伝わり、インプラント体や顎の骨に力が伝わります。特に噛み合わせが強すぎる人や歯ぎしり、食いしばりなどの癖がある人は、インプラントに負担がかかりやすく、トラブルを引き起こす原因になることが考えられます。
そして歯根膜がないことで、血液からの栄養分が補給されにくいという欠点があります。これは細菌に対する抵抗力が天然歯よりも弱く、インプラント周囲炎のリスクが高まってしまうと言えます。インプラント周囲炎は、インプラント治療後の最も心配されるトラブルです。歯周病菌に似た症状で、歯肉の腫れや出血から始まり、炎症が進むと歯槽骨にも影響が出てきます。天然歯の歯周病と同じく、歯槽骨が吸収され始めます。歯槽骨が薄くなると、せっかく顎の骨とインプラントのオッセオインテグレーション(結合)が失われ、インプラントが抜け落ちてしまったり、インプラントの除去を行わなくてはならない状況になってしまいます。
このように、天然歯にはある歯根膜が、インプラントは持ち合わせていないことで防御反応が弱くなり、インプラント周囲炎に罹患しやすくなってしまうのです。

インプラント周囲炎にならないためには、徹底した口腔内管理が必要

インプラントは「第二の永久歯」と呼ばれているほど優れた機能を持ち合わした治療法です。天然歯のように虫歯になることもありません。
しかし、どれほど優れた機能と美しい見た目を持ち合わせたインプラントでも、天然歯には適わないのです。それは、歯根膜の有無に深く関わります。
本来持ち合わせているべき歯根膜がないインプラントは、やはりインプラント周囲炎が心配です。虫歯は歯そののもの病気であることに対し、歯周病やインプラント周囲炎は歯ぐきや歯周組織の病気です。インプラント周囲炎にならないようにするには、毎日のケアをきちんと行うこと、そして歯科医院で定期健診をきちんと受けることです。お口の中の衛生管理は、インプラント周囲炎に対する最大の予防策です。
入れ歯のように取り外してケアすることができません。細菌に対する防御反応を持つ歯根膜がない分、正しいブラッシングとデンタルフロスや歯間ブラシなどを使って毎日きちんとケアを行い、定期健診でプロの手による徹底したメンテナンスを行うことでインプラント周囲炎を予防するしかありません。

もちろん、天然歯は虫歯にもなり、歯周病で歯を失ってしまうことも考えられます。しかし、同じ細菌感染であっても、天然歯と比べると歯根膜がないインプラントは、防御反応が弱く、いちど炎症が起こると、天然歯に比べて進行が早いことが特徴です。
インプラント周囲炎になると治療も大変になるため、徹底した口腔内管理が必要です。

歯を失わないために

天然歯とインプラントの違いについてお話をしました。歯根膜が持つ役割は非常に大きく、どれだけ優れた機能を持つインプラントでも適うことはありません。
ここで考えていただきたいのが、「なぜ歯を失ってしまったか」です。歯を失う理由は様々ですが、その大部分は虫歯か歯周病です。歯を失うと、歯根膜も失ってしまうことになります。
歯を失わないためにも、定期健診は必ず受けるようにし、インプラント治療を行った方は、インプラント周囲炎にならないよう、口腔内の衛生管理をきちんと行いましょう。