基礎知識

インプラントの常識を覆す?!安価なインプランの安全性は?

19.08.26

インプラントは失った歯の機能を長期的に補う為に行う治療法の1つです。入れ歯やブリッジは保険診療対象となりますが、インプラントは定められた条件を満たさない限り、保険診療は適応されません。インプラントの治療費は高価になる傾向にあるために、少しでも安価なインプラントを求める患者さまも少なくありません。そこで今回は、安価なインプラントの安全性やその実態について詳しくご紹介してまいります。

インプラントの適正価格は?

インプラント治療は外科手術を伴う治療法であり、その価格は高価なものから安価なものまで様々な料金設定が存在します。インプラントは保険診療も適応する治療法でもありますが、以下の条件に満たさない場合には、自費診療となります。

【インプラント治療が保険診療となる条件】

▼先天性に上顎1/3以上が連続的に欠損している場合
▼疾患や事故により顎の骨が広範囲に渡り欠損している場合
▼下顎1/3以上が連続的に欠損し切除した、または切除が望ましい場合

更には、インプラント手術を受ける施設の条件も定められています。

▼20床以上のベッド(入院用)を設けている歯科、歯科口腔外科
▼医療機器、医薬品を安全に管理する設備が整っている施設であること
▼当直設備、体制が整っていること
▼上記全ての条件が当てはまる歯科、歯科口腔外科で5年以上の勤務経験がある、またはインプラント治療の経験が3年以上ある常勤の医師が2名以上勤務している施設
上記の通り、むし歯や歯周病で歯を失った場合や、更には審美性を優先してインプラント治療を受ける場合には、保険診療は適応されず、自費診療となります。
自費診療の金額は各歯科医院で自由に選択できることからも自由診療とも呼ばれ、その価格はそれぞれ異なります。そのことからもインプラントの治療費は、安価な金額から高価な金額まで様々な料金設定が歯科医院毎に設けられています。

主に一般的なインプラント治療の費用の内訳は以下の通りです。

▼受診料・精密検査費用・・・15,000円~50,000円
▼インプラント手術費・・・100,000円~350,000円
▼補綴物(人工歯)費用・・・100,000円~150,000円
▼定期的なメインテナンス費用・・5,000円~10,000円

インプラント治療を行う為に抜歯が必要になる場合は、更に費用が掛かります。

▼抜歯費用・・・5,000円~8,000円
▼仮歯費用・・・5,000円~20,000円
▼消毒費用・・・1,500円~3,000円
インプラント治療の相場は1本あたり300,000円~400,000円と言われていますが、以下の条件によってインプラント治療の費用は異なっていきます。

▼インプラントを埋め込む位置や骨の状況

インプラント治療費は埋め込む位置が前歯か奥歯かでも、価格に差がある場合があります。特に前歯の場合は、審美的にも留意しなくてはならず、価格は高価になる傾向があります。また、歯槽骨の量や質がインプラント治療に不向きの場合には、骨造成治療を行う必要もあり、その費用は更に高価となります。

▼1回法か2回法か

インプラントには1回ですべての手術工程を完了させる1回法と、2回に分けて手術を行う2回法があり、1回法と比べると2回法の方が高価となります。

▼インプラントシステムの違い

世界には150社以上のインプラントメーカーが存在し、各メーカーが様々なインプラントシステムを発売しています。精密医療機器であるインプラントは、品質や安全性を保証するためにも原価が高くなる傾向にあり、インプラント治療費が高価になる要因の1つとも言えます。

▼技術費の違い

インプラント手術を行うためには、高度な技術が必要となるために、技術費が高価に設定されている場合もあります。しかし、安全にインプラント治療を行う為には必要不可欠な費用となります。

安価なインプラントの特徴は?

インプラント費用を抑えたいと考える患者さまも少なくありません。しかし、「安かろう、悪かろう」という言葉があるように、インプラント治療でも同じように安価な治療費は様々なリスクを伴う可能性があります。前述でご紹介したように、インプラント費用は高価な傾向になる理由が存在するように、安価で提供できる理由も理解しなければなりません。

【安価なインプラントの特徴】

・材料費を抑えたインプラントが使用されている
・ノーブランドのコピーされたインプラントを使用
・インプラント治療に必要となる補助器具の用意をしない
・経験の少ない医師による施術
・保証期間が短い
・手術費や補綴物を除くインプラントのみの価格を大きく宣伝している

なかには質の高いインプラントシステムを採用し、確かな技術を持った歯科医師による施術を良心的な価格で提供している歯科医院も存在しますが、安価をうたう場合は上記のような特徴がある場合もあり、しっかりと見極める必要があります。

安価なインプラントの事例

安価なインプラント手術により、以下のようなトラブルも起きています。

インプラント使い回し事件

安価なインプラント治療を行っていた歯科医院が、抜けてしまったインプラントをそのまま他の患者さまに使用していた事実が発覚し、民事提訴にまで発展しました。インプラントを使い回すことは禁忌であり、肝炎やHIVなどの血液感染が危惧されます。

インプラント1本あたりの相場は総額300,000円~400,000円と言われていますが、問題となった歯科医院では1本15万円と破格な価格で治療を提供し、適正な治療を行わずに抜けてしまったインプラントを使い回すことで多くの利益を得ていました。

このような事例は稀ではありますが、安価なインプラント治療を受ける場合には、少なからずリスクを伴います。

まとめ


以上、今回は安価なインプラントについてご紹介しました。インプラントは体内に埋め込む精密医療機器であるために、価格だけではなく品質や安全性を重視することが、インプラント治療を成功させるカギとなります。虫歯や歯周病で歯を失った際の選択肢の1つであるインプラント治療を成功させ、末永くインプラントを維持するためにも、治療内容やインプラントメーカーの確認と共に、担当の歯科医師に相談をし、患者さま自身がご納得するインプラント治療を受けましょう。