基礎知識

金属アレルギーでもインプラント治療できるの?!

19.08.05

インプラントの主な材料は何かご存知でしょうか。インプラントはチタンと呼ばれる金属で形成されているため、金属アレルギーの患者さまに至っては、「インプラント治療は出来ないもの」と誤解されている人も少なくありません。しかし、金属の種類は幾つも存在し、アレルギー症状を引き起こす可能性のある金属を把握することで、インプラント治療を受けられる可能性があります。そこで今回は金属アレルギーとインプラントについて詳しくご紹介してまいります。

金属アレルギーの仕組みや影響

突然、身体が痒くなった経験はありませんか?金属アレルギーは「接触皮膚炎」とも呼ばれ、身に付けたネックレスやブレスレットの金属成分が汗で溶け出し、接触した皮膚に含まれるたんぱく質に反応して痒くなったり、かぶれたりと症状が出ます。

このように身近な金属が原因となる金属アレルギーではありますが、歯科治療でも金属を使用しており、虫歯で歯を削り失った歯の機能を補うために被せる銀歯にもアレルギー反応を起こしてしまう患者さまも少なくなく、金属アレルギーを持つ患者さまにとって歯科治療はハードルが高いものとなっています。

アレルギー症状を起こしやすい金属

自然界に存在する約100種類もの元素のうち、70種類もの元素が金属であり、アレルギー反応を起こしやすい金属と、アレルギー反応が起きにくい金属が存在します。中でも以下記載の3つの金属は、特にアレルギー反応が起きやすいと言われています。

【アレルギー症状を起こしやすい金属】

▼ニッケル

金属アレルギーを起す確率がもっとも高い金属として広く知られている金属です。硬貨や食器、眼鏡のフレームなど私たちの生活の中で身近なものに使用されています。

▼コバルト

磁石や入れ歯、リチウムイオン電池などの原材料として活用されている金属です。

▼水銀

蛍光ランプ、水銀電池、水銀体温計などに活用されている金属ですが、水銀は身体や胎児に影響を及ぼす可能性があるため、2020年末日より水銀を使用する様々な商品の製造・輸出が禁止となります。

【アレルギー反応を起こしにくい金属】

▼チタン

インプラントの主な材料です。親和性が高く、アレルギーが起きにくい金属として広く知られています。

▼金

歯科治療で活用される補綴物や指輪、ネックレス、ピアスなどに使用されている金属です。

▼銀

食器や指輪、ネックレス、ピアスなど身近なものに活用される金属です。

チタン製インプラントは安全なの?

歯科治療では「銀歯」と呼ばれる補綴物の金属に歯科鋳造用12%金銀パラジウム合金が使用されています。歯科鋳造用12%金銀パラジウム合金は口の中でイオン化し金属イオンが溶けやすくなり、唾液や口腔内細菌などのたんぱく質に反応しアレルギー症状を引き起こしてしまうリスクがあります。

一方、インプラントで使用するチタンは親和性に優れる金属であり、酸化チタンの被膜に覆われている特性があるために、口の中でイオン化することはなく、金属イオンが溶け出すことはなく、アレルギー反応が出にくい理由でもあります。それらのことからも、インプラントの他にも人工関節にも活用されている、信頼性の高い金属であります。

なぜインプラントはチタンなの?

前述でもご紹介したように、チタンは口や体内の中でイオン化せず、金属イオンが溶け出すリスクは少なく、チタンで金属アレルギーの症状を引き起こす確率は低く、歯科治療や外科手術で活用されています。

また、チタンがインプラントに活用されるもう1つの理由は、人骨との結合です。チタンと人骨の結合が発見される以前は、様々な金属を材料にしたインプラントが試されてきましたが、どれも結合することなく、金属を異物として認識した身体から拒否反応として炎症反応が見られていました。

1965年に初めてチタン製のインプラントが適応し、それから半世紀あまりの時間が経過しましたが、70種類もの金属の中で、唯一人体と結合する金属として現在もなお活用され、3~6ヶ月かけてゆっくりと歯を支える役割のある歯槽骨と結合していきます。

インプラントと金属アレルギー発症のリスク


インプラントは金属アレルギーの症状が出にくいと言われていますが、決して症状が出ないとはいいきれません。インプラント治療を行うまで、金属アレルギーを発症した経験がない人がチタンの使用により、金属アレルギーを発症する確率は極めて低いと考えられますが、ごく一部の患者さまにアレルギー反応が起こったとの報告があるのも事実です。

万が一インプラント治療で金属アレルギー症状がでたら


インプラント治療を行う上で、金属アレルギーの症状が出た場合には歯科医師指導のもと、様子を伺い、症状が著しい場合には治療を中止し、歯槽骨に埋め込んだインプラントを撤去しなければなりません。
以下が金属アレルギーの症状となります。
▼扁平苔癬・・・白い線条、赤い腫れ、痛みを伴います。
▼手足の丘疹・・・手足に小さな丘疹、かゆみを伴います。

インプラント治療開始前にパッチテストを

金属アレルギーに不安を覚える場合には、皮膚科で実施されているパッチテストを行い、歯科治療で主に使用する金属である、チタン、第二水銀、ニッケル、パラジウムに対する金属アレルギーの有無を確認することをおすすめいたします。

まとめ


以上、今回は金属アレルギーを持つ人でもインプラント治療を受けられるのか、金属アレルギーの特性や、リスクなどについてご紹介してまいりました。インプラント治療で金属アレルギーを発症する患者さまは限りなくゼロに近いと言えますが、ゼロとは断言できないのが現状であり、正しい知識と事前のアレルギーチェックを行うことが重要となります。インプラント治療をお考えの場合には、お気軽にご相談ください。