インプラントコラム
COLUMN
治療前に知っておくべき、インプラントの基礎知識
20.03.21
虫歯や歯周病、あるいは事故などで歯を残すことができなくなった場合、早急に噛む機能
を取り戻す治療を行わなければいけません。その治療方法として入れ歯、ブリッジそして
インプラントがありますが、大半の方はインプラントがどういった治療法なのか、ご存じ
ないと思います。まずはご紹介するインプラントの基礎知識を理解し、治療の選択肢のひ
とつとしてお考えいただければと思います。
なぜ歯は失ったままではいけないのか
歯を失ったまま放置しておくと、いったいどんな影響が出るのでしょうか。目立つ前歯は
ともかく、奥歯を失ってしまっても「奥歯だから気にしない」とそのままにしておく方が
いらっしゃいますが、これは良いことではありません。歯が抜けたままにしておくと、ま
ず噛み難くなります。私たちはしっかり噛んで食事することで、体の健康を維持すること
ができます。しっかり噛むと、唾液が分泌されますが、この唾液はとても重要な役割を持
っています。食べ物と混ざることで消化を助ける役割、お口の中の細菌を洗い流す役割な
どを持ち合わせており、しっかり噛むことで唾液が分泌されるのです。
またよく噛むことは脳の活性化に繋がり、もの忘れなどを防ぐ働きがあると言われていま
す。しかし歯が抜けたままだとよく噛めないため、唾液の分泌が少なくなったり、脳の活
性が抑制されてしまいます。
そして歯が抜けた状態は、見た目にも影響します。歯が一本抜けているだけで口元の印象
が悪くなり、老けて見えるなど審美面にも問題が出てしまいます。
このように、歯が抜けたままにしておくことで様々な悪影響が出てしまうため、早急に噛
む機能を取り戻す治療が必要になるのです。
インプラントとはどんな治療法?
では次に、噛む機能を取り戻す治療についてお話を進めていきましょう。よく知られてい
るのは入れ歯、そしてブリッジです。この二つは保険が適用されるので、安価で治療する
ことが可能です。しかしブリッジの場合、両隣の歯が健康であることが第一条件となるた
め、条件に適合しない場合、やむを得ず入れ歯にする方も多いことでしょう。
ここでインプラントという選択肢が出てきますが、インプラントが気になっていても、そ
の仕組みや良さが分からない方も当然いらっしゃると思います。ではインプラントとはど
んな治療法なのか、インプラントの基礎知識をご紹介しましょう。
インプラントとは?
インプラントとは、人工の根のことです。外科手術によって失った歯の部分にインプラン
ト体を埋め込み、顎の骨と結合させて根の役割を担い、その上に被せ物を被せて噛む機能
を取り戻します。よりよい機能と高い審美性を追求した治療法で、保険適用の治療と比べ
ると仕上がりに大きな差が出ます。
インプラントの素材について
インプラント体は主に純チタンまたはチタン合金の素材でできています。チタンは生体親
和性に優れており、アレルギーが出にくい素材のため、人工関節としても使用される安全
な素材です。最近ではチタンだけでなく、ジルコニアを使ったインプラント体も導入され
ており、より安全性を高めたインプラント体が開発されています。
インプラント手術の流れ
インプラントは、外科手術を伴う治療法です。麻酔をして歯ぐきを切開し、顎の骨に穴を
開けてインプラントを埋め込みます。インプラント体と顎の骨が結合することを「オッセ
オインテグレーション」と言いますが、結合するまでに数か月間を要します。部位にもよ
りますが、上顎で6~8か月、下顎で3~6か月程度が目安となります。この間は歯がない
状態か、仮歯を入れる、あるいはお使いの入れ歯を使うなど、状況に応じた過ごし方をし
ていただきます。
なおインプラント手術の術式には、外科手術を一度行う一回法と、外科手術を二度行う二
回法があります。多くの場合、ほとんどの症例で適応できる二回法による手術が行われま
す。
一回法はインプラント体の先端を歯ぐきから露出させたまま結合期間に入ります。いっぽ
う二回法では、歯ぐきを縫合して閉じます。このほうが細菌感染のリスクが低いため、歯
周病で歯を失った方などは、二回法のほうが望ましいでしょう。
インプラント体と顎の骨の結合が確認できたら、型取りの準備を行います。二回法の場合
、歯ぐきを再び切開してインプラント体の先端を露出させます。傷口の治癒を待って型取
りを行い、出来上がった被せ物を装着して噛み合わせを調整し、問題がなければインプラ
ント治療は終了です。
インプラント治療のメリット
ではインプラント治療におけるメリットをご紹介しましょう。
・審美性に優れており、美しい口元を取り戻せる
・天然歯に近い感覚で噛むことができる
・他の歯に影響を与えず治療することができる
・他の歯の健康を維持しやすい
・セルフケアと定期的なメンテナンスをしっかり行えば、長持ちする
この中でも、特に特筆すべき点は、「他の歯の健康を維持しやすいこと」です。入れ歯や
ブリッジは、どうしてもバネをかける歯や土台となる歯に大きな負担がかかってしまいま
す。その結果、土台の歯がダメージを受けやすく虫歯や歯周病になり、最悪の場合歯を失
ってしまう恐れがあります。
インプラントはその心配がありません。他の歯に影響を与えることなく治療を行うため、
残存歯の健康を維持しやすいことが、インプラントの最も大きなメリットだと言えるでし
ょう。
インプラントのデメリット
では逆に、インプラントにはどのようなデメリットがあるのでしょうか。
・ごく一部の症例を除いて自費治療となるため、治療費が高くなる
・外科手術を伴う
・全身の健康状態によっては、インプラント治療ができない場合がある
・再治療が必要になった場合、状態によっては再びインプラントができない場合がある
・メンテナンスを怠った場合、インプラント周囲炎のリスクが高まる
インプラントはどうしても費用が高くなること、そして外科手術が必要であることは、他
の保険治療と比べるとデメリットが大きいと思います。
インプラント治療の特徴をよく理解して、治療方針を決めることが大切
インプラントの基礎知識についてご紹介しました。インプラントはしっかり噛めること、
見た目が美しいこと、そして残っている歯の健康を維持しやすいことが大きな特徴です。
しかしながら、全ての方にインプラントが適しているとは限りません。当然デメリットも
存在するため、必ずしもインプラントだけが治療の選択肢とは言えないことも事実です。
ご紹介したインプラントの基礎知識を参考にしていただき、最も良い治療を選択すること
が、ご自身の快適な生活に繋がるでしょう。
インプラント治療をお考えの方は、歯科医院選びをしっかりと行うことが大切です。丁寧
なカウンセリング、豊富な治療実績そして安全性を重視した歯科医院を選ぶようにして下
さい。