インプラントコラム
COLUMN
糖尿病でもインプラント治療は可能 安心・安全に受けるための注意点
20.09.27
持病で糖尿病をお持ちの方は、インプラントを受けたいと思っても「できないのでは?」
と諦めてしまっている人もいらっしゃるのではないでしょうか?
糖尿病の方でも、状況によってはインプラントを受けることが可能です。
今回はインプラント治療と糖尿病の関係や、治療に関するリスクなどを詳しくご紹介しま
す。インプラントをご検討の際に参考にご覧ください。
まずは、糖尿病とお口の関係性を理解しましょう
一見からだの病気で関係性が無いように思える糖尿病ですが、お口(歯周病)と切っても
切れない深いつながりがあります。相互関係を知ることで、インプラントを受けるための
準備ができます。
◯糖尿病とは
糖尿病は膵臓が糖を分解できず尿に出てしまう病です。血液中のブドウ糖濃度が高くなる
ため、微小血管の障がいを起こしたり、組織や臓器の低酸素状態を起こします。他にも、
白血球の一種「好中球」に障害を起こすことで感染のリスクが高くなり、糖尿病を放置し
て進行させてしまうととさまざまな合併症を起こしやすくなります。
◯糖尿病とお口の関係性
糖尿病が進行すると身体の抵抗力や免疫力が低下します。口腔内では唾液の分泌が減り、
歯血球の機能低下や歯周病の原因菌が活発になるため、歯周病が悪化しやすくなってしま
います。
また、逆もあります。歯周病が悪化すると、炎症性物質(TNFa)が大量に生成されます。
炎症性物質が増えることでインスリンの働きが抑制され、血糖値のコントロールができな
くなってしまい、高血糖状態になりやすくなるのです。
◯「肥満」にも注意が必要
全てとはいえませんが、肥満であることが糖尿病や歯周病と関係することが考えられます。
脂肪細胞は血糖値を押さえる「インスリン」を阻害する物質を分泌するとされています。
インスリンが作用しないと血糖値のコントロールができなくなり、糖尿病になりやすくな
ります。
糖尿病により高血糖になると唾液の分泌量が減るため、口渇しやすくなり、白血球機能の
低下や歯周病菌の増殖がおこなわれ、歯周病を発症しやすくなります。
糖尿病があるとインプラントできないの?
確かに、糖尿病の方はインプラントが難しい場合もありますが、状況によっては治療がで
きる場合もあります。なぜインプラントできないケースがあるのか、どんな場合であれば
治療できるのかを解説します。
◯インプラント治療成功にとって歯周病はNG!
インプラントは顎の骨に穴を開けて土台を埋入する外科手術をおこないます。その後はイ
ンプラントの土台が顎の骨や歯周組織と結合して安定して人工歯を装着します。
インプラント周辺が歯周病症状を起こすことを「インプラント周囲炎」と呼び、歯周病と
同じように周辺の歯茎を炎症させ、悪化すると顎の骨を溶かしてインプラント脱落の原因
になってしまいます。
もしも糖尿病によって重度の歯周病に罹患している場合は、インプラント治療をすること
ができないと判断されることもあるのです。
◯術後感染症を起こす可能性がある
糖尿病を持っている方にインプラント治療を行った場合、気を付けなければいけないのが
術後の感染症です。先にご紹介したように、さまざまな感染症を起こしやすいため、糖尿
病でない方よりも術後の感染症のリスクは高くなります。糖尿病であったとしても軽度で
、お口の状態が良いということでインプラントがおこなえたとしても、その後のメンテナ
ンス不足などからインプラント周囲炎を起こしてしまうこともあります。また、術後に糖
尿病が悪化して、インスリンの欠乏や高血糖状態により、骨芽細胞の機能を低下させてし
まったことでインプラントが骨と結合するのを妨げてしまうこともあります。
◯血糖値のコントロールができるかどうかがカギ
糖尿病であっても、日常的にしっかり血糖値をコントロールし、口内環境も良好な方であ
れば、インプラント治療を受けても問題ない方はいらっしゃいます。また、術後のメンテ
ナンスを欠かさず、生活習慣に気を付けることも必要にはなりますが、絶対に受けられな
いというわけではありません。
まずはかかりつけの歯科医院に相談し、現在の糖尿病とお口の状況を確認してもらうこと
から始めましょう。
糖尿病がありインプラントを受ける場合の注意点
糖尿病の方がインプラントを受ける場合、糖尿病でない方が治療を受ける場合とは別に気
を配っておかないといけないことがあります。
場合によっては、糖尿病でかかりつけの内科担当医と、インプラント治療をおこなう予定
の担当歯科医師が連携して情報交換することもあります。
◯基準となる数値があります
糖尿病の方がインプラント手術を受ける場合、HbA1cという、血管の中でヘモグロビンが
ブドウ糖と結合したものの値がが7.0未満であることが治療を受けられる目安となります。
また、空腹時血糖値が180[mg/dl]以上の人は受けることができません。
◯インプラント治療前の血糖値コントロール法
日常的に血糖降下剤を服用したり、インスリン注射をおこなっている方は、事前に内科の
担当医にもインプラントを受けることについて相談しましょう。手術当日はいつも通りの
食事が摂れなかったりすることもありますので、血糖値の下がり過ぎなどにも注意が必要
になります。
◯傷口の治りが遅いため細菌感染に注意
糖尿病の方がインプラント治療を受けた場合、傷の治り具合がそうでない人に比べて遅い
傾向があります。傷の治りが遅いということは、それだけ傷口から細菌感染するリスクも
高くなってしまいます。インプラント体(顎の骨に埋入している土台)が細菌感染を起こ
すと、インプラントが骨や周辺組織となかなか結合できず、インプラント治療継続が難し
くなるケースもありますので、回復期間は口腔内を清潔に保つなどのケアも注意する必要
があります。
まとめ
糖尿病と歯周病は密接な関係性にあり、インプラントをおこなうにあたり大きな問題点で
あることは確かです。ただ、しっかり事前に準備やケアをおこなうことで、糖尿病の方で
もインプラント治療をおこなうことができる症例もあります。
インプラントは喪失した歯を補う修復方法の中でも天然歯により近い機能性や審美性を備
えた方法です。
ご希望の場合はぜひ一度、糖尿病であることの詳細な情報と共に、歯科医師にご相談くだ
さい。