インプラントコラム
COLUMN
インプラントの寿命を少しでも伸ばすためには?
20.09.28
天然歯に近い噛み心地と審美性に優れているインプラントですが、必ずしも一生持つとは
限りません。しかしお手入れや日常生活に少し気をつけることで長持ちさせることは十分
可能です。ではインプラントの寿命を少しでも伸ばすためには、どのようなことに気を付
けるべきなのでしょうか。
インプラントの平均的な寿命について
インプラントに使われている素材は純チタンまたはチタン合金です。チタンは生体親和性
に優れているだけでなく、腐食しにくい素材のため、インプラント体が顎の骨の中で腐食
することはありません。またインプラントの上に被せる上部構造(被せ物)も、虫歯にな
ることはありません。
また噛み合わせが適切であることも、インプラントの寿命に大きく関わります。噛み合わ
せに問題がない場合も含め、インプラントの平均寿命はおよそ10年~15年程度と言われて
います。適切に使われている場合の予後も良く、術後10年における成功率は95~97%と、
非常に高い数字が報告されています。同じ欠損補綴治療である保険の入れ歯の平均寿命は
およそ5年、ブリッジにおいては7~8年と言われており、この数字からもインプラントが長
持ちする治療であることが証明されていると言えます。
しかし、インプラントが適切に使われていない場合、平均寿命を迎えるどころか、入れ歯
やブリッジよりも短い期間で不具合やトラブルが起こり、再治療を余儀なくされることも
あります。
インプラントの寿命を短くする要因
長く快適に使い続けたいインプラントですが、お口の中の要因や生活習慣によって、寿命
が短くなってしまうことがあります。ではインプラントの寿命に関わる要因とはどういっ
たことでしょうか。
・インプラント周囲炎および歯周病・・・インプラント周囲炎は、インプラント治療後に
起きる最も注意すべきトラブルです。歯周病と同じように歯ぐきの腫れや出血が初期症状
ですが、歯周病と比べると症状の進行が早いこと、そして自覚症状があまりないことが特
徴です。天然歯には「歯根膜」という薄い膜があり、歯周病菌などの細菌が簡単に奥へ入
り込むのを防ぐ役目があります。しかしインプラントは直接顎の骨と結合しており、歯根
膜の代わりになるような組織がありません。そのため防御反応が低く、歯周病菌が入り込
んで簡単に炎症を引き起こしてしまいます。インプラント周囲炎が悪化すると歯槽骨が吸
収され、インプラントがグラついたり抜け落ちたりしてしまいます。
また歯周病の方も注意が必要です。歯を失った原因が歯周病の場合、よりインプラント周
囲炎および残存歯の歯周病に注意しておかなければいけません。
・噛み合わせの悪さ・・・もし噛み合わせが悪いと、インプラント部分に過度な負担がか
かり、インプラントの破損のリスクが高まります。
・歯ぎしりや食いしばりの癖がある方・・・歯ぎしりなど無意識に行う癖が、インプラン
トの寿命を短くしてしまうことがあります。寝ている間に強く噛みしめたり、歯と歯をこ
すり合わせると、インプラントにダメージが加わり、インプラント体および人工歯が破損
してしまいます。また残存歯のエナメル質もすり減り、象牙質が見えて冷たいものなどが
しみる「咬耗症」になる恐れがあります。
・喫煙習慣・・・タバコを吸うと歯ぐきに送られる酸素が少なくなり、血管が収縮してし
まいます。そのためインプラント周囲炎のリスクが高くなり、インプラントの寿命を短く
してしまいます。
・糖尿病・・・糖尿病になると傷口の治りが悪く、感染症にかかりやすくなってしまいま
す。そのためインプラント治療後の治癒が遅くなったり、顎の骨とインプラント体の結合
が得にくくなってしまいます。そのためインプラントの寿命にも影響が出てしまうことが
考えられます。
特に歯周病と深く関わりがあり、糖尿病の人は歯周病になりやすく、歯周病の人は糖尿病
を引き起こす可能性が高くなると言われています。このことからわかるように、糖尿病の
人は血糖値のコントロールが非常に重要になります。
インプラントを長持ちさせるために欠かせないこととは?
・家庭でのセルフケアおよび定期的なメンテナンス・・・インプラントの寿命に大きく関
わるのは、家庭での毎日のセルフケアと、歯科医院での定期的なメンテナンスです。毎日
の丁寧なケアは、お口の中の健康維持の基本中の基本です。このケアが疎かになると、イ
ンプラント周囲にプラークが溜まり、歯周病菌などの細菌が寄り付いてインプラント周囲
炎を引き起こしてしまいます。天然歯同様、まずはご家庭でのセルフケアをきちんと行い
ましょう。
そしてもうひとつ非常に重要なことは、歯科医院で定期的なメンテナンスをきちんと受け
ることです。歯科医院で受けるメンテナンスは、家庭でのセルフケアでは落としきれない
プロフェッショナルな施術を受けることができます。このメンテナンスを受けることによ
り、インプラント周囲の細かな汚れを取り除き、歯周病やインプラント周囲炎のリスクを
減らすことができます。
またインプラントに異常はないか、噛み合わせは適切かどうかなどもチェックし、問題な
くインプラントが使えているかどうかも確認します。
・ナイトガード(マウスピース)の着用・・・歯ぎしりや食いしばりがある方は、インプ
ラントや他の天然歯の一部に大きな負荷がかかってしまいます。特にインプラントには歯
根膜がないため、刺激がダイレクトに伝わってしまいます。この刺激はインプラントダメ
ージを与え、歯やインプラントの破折の原因になってしまいます。
このようなことを防ぐために、歯ぎしりや食いしばりがある方は「ナイトガード」という
マウスピースを装着することで、歯やインプラントを長持ちさせることができます。
・全身の健康管理・・・全身の健康管理もインプラントを長持ちさせるポイントです。特
に糖尿病は歯周病の悪化を招くため、インプラント周囲炎のリスクを高めてしまいます。
かかりつけ医と相談しながら、健康管理を行うことがインプラントの寿命を伸ばすことに
も繋がります。
インプラントの保証期間について
インプラントの寿命を伸ばすために必要なことをお伝えしてまいりました。これに加え、
もうひとつ大切なことは「歯科医院選び」です。インプラント治療を専門に行っている歯
科医院のほとんどは、一定期間の保証がついたメーカーのものを使用しています。
また10年保証など、歯科医院独自の保証期間を設けているところも多く見られます。万が一トラ
ブルが起きた場合でも安心して治療を受けることができるため、インプラント治療をお考
えの際は、歯科医院選びがとても大切になります。
インプラントはしっかりとメンテナンスを受け、正しく使用することで長い期間使うこと
ができます。再びしっかり噛める歯を取り戻したい、他の歯の健康を守りたいとお考えの
方は、インプラントの実績豊富な歯科医院に相談することをお勧めします。