基礎知識

糖尿病の方は注意が必要!インプラント治療と糖尿病の関係

23.06.29

糖尿病は免疫力が低下したり、さまざまな合併症をひき起こしたりする疾患ですが、インプラント治療は可能か気になる方もいるのではないでしょうか?

結論からお伝えすると、糖尿病の方もインプラント治療を受けることは出来ますが、条件をクリアしている必要があります。

そこで今回は、インプラント治療と糖尿病の関係について詳しくご紹介します。

 

糖尿病とお口の関係

糖尿病は、血糖を下げる働きがある「インスリン」の働きが弱くなったり、不足したりして血液中の血糖(ブドウ糖)が高くなる病気です。

その中で、免疫の異常などでインスリンが作られなくなる「Ⅰ型糖尿病」とインスリンは作られても、働きが弱かったり、不足したりするために血糖が高くなる「Ⅱ型糖尿病」があります。Ⅱ型糖尿病は、食習慣や生活習慣が関係していることが多く、比較的血糖をコントロールしやすいです。

 

糖尿病になると、唾液が減少するためお口の中が乾きやすく、汚れが残りやすい状況です。

そのため口臭が出やすく、免疫力も低下するため、歯周病の感染リスクも上がります

また、糖尿病の方が歯周病になると歯ぐきの炎症で作りだされる物質が血液を介してインスリンの働きを悪くしてしまうため、血糖のコントロールが悪くなります。

 

さらに、糖尿病で高血糖の状態が続くと、免疫機能が低下するため、悪化しやすくなります。

ただし、歯周病が改善すると、血糖のコントロールも良くなるという相互関係が分かってきています。

歯周病の治療をすることが、糖尿病の改善につながっています。

 

糖尿病の方がインプラント治療を受ける時の注意ポイント

ポイント1 感染のリスクが上がる

インプラント手術をする際には、外科手術が必要で、顎の骨にインプラント体を埋め込むために歯ぐきの切開などが必要になります。

お口の中の清掃状況がよく、免疫力も十分にある場合には感染することは少ないですが、糖尿病の方は高血糖で免疫力が低下しているため、細菌感染しやすく、お口の中をしっかり清潔にして十分に休むなどの配慮が必要です。

 

ポイント2 インプラント周囲炎のリスクが高くなる

インプラントと歯周病は深い関係があるのですが、インプラントにも歯周病に似た「インプラント周囲炎」があります。

インプラント周囲炎は、歯周病と同様に汚れが残っていることが原因で細菌感染して歯ぐきに炎症を引き起こし、悪化すると顎の骨も溶かしてしまいます。

さらに、天然歯の場合には、歯根膜というクッションの役割をした膜があるのですが、インプラントにはないため、細菌感染のダメージをダイレクトに受けてしまい、感染スピードが速い特徴があります。

また、自覚症状が少ないため、気づいた時にはかなり悪化していたということも。

定期的にインプラントのメンテナンスを受けていれば、一気に悪化することは少ないため、必ず決められた期間に定期メンテナンスを受けましょう。

 

ポイント3 傷の治りが悪くなる

糖尿病で血糖値が高い状態が続くと、血管に悪影響を及ぼし、血流が悪くなってしまいます。

そうすると、酸素や十分な栄養が行き渡りにくくなってしまい、傷の治りが悪くなります。

そのため、糖尿病の方はインプラント治療が長くなる傾向にあります。

十分な休養や睡眠、栄養バランスが整った食事をして免疫力を高めるようにしましょう。

 

ポイント4 骨吸収しやすくなる

骨は代謝をしていて、骨吸収と再生のサイクルを繰り返しています。

骨吸収とは、骨が分解されることで、糖尿病の方は骨吸収が進みやすいといわれています。

そうすると、せっかく顎の骨に埋入したインプラントの支えが少なくなり、インプラントがグラグラするなどのインプラントトラブルにつながる可能性もあるため、定期的に顎の骨の状況を把握することが大切です。

 

ポイント5 低血糖の可能性がある

インプラントが1本など本数の少ない場合には、ほとんど食事制限がありませんが、複数本インプラント体を埋め込んだ後や骨造成の手術をした後は食事の内容を考慮していただく必要がある場合があります。

その場合、いつも通りインスリンの薬を服用すると低血糖になる可能性があります。

また、手術後に食事が十分に食べられなかった場合もこの可能性があります。

血糖が上がり過ぎるのもよくないですが、低血糖を起こすとめまいや貧血のような症状が出るため、あらかじめ主治医と相談して、インプラント手術後の薬の服用方法についても相談しておきましょう。

食事が十分に取れない場合など質問しておくとスムーズなので、事前に確認しましょう。

 

糖尿病の方がインプラントを受ける時に注意すること

術前の血糖コントロールの状態

糖尿病の方も血糖のコントロールができていればインプラント手術が可能です。

しかし、血糖のコントロールが難しい場合には、外科手術は行いません。

手術前に血糖値を測ることが大切です。

また、低血糖になる可能性を軽減するため、インプラント手術は空腹時の状態を避けるようにします。

 

かかりつけの医師と連携する

糖尿病の治療をしている患者さまの手術をする際には、かかりつけの医師と連携して、現在の症状や手術ができるかなどを相談します。

その上で血糖のコントロール状態や投薬に関して情報を交換してインプラント治療の計画を立案します。

 

低血糖の発作の対策

これまでに低血糖の発作を起こしたことがある方は、対策をしておくことが大切です。

簡単に取り入れやすい方法は、氷砂糖を持っていて、低血糖の症状が出た時に補給する方法です。

また、インプラント手術をする前にご飯を食べて、空腹状態にならないようにすることも1つの方法になります。

 

【まとめ】

糖尿病の方もインプラント治療はできますが、血糖コントロールができていることが大切です。Ⅱ型糖尿病の方は生活習慣を改善すると血糖コントロールにつながりますので、頑張りましょう。

また、主治医と連携を取ったり、低血糖の対策を取っておいたりすることも重要です。

インプラント手術はきちんと準備して、対応するとメリットの多い治療です。

失った部分のインプラントを検討している方はぜひ1度お気軽にご相談ください。