基礎知識

歯周病でもインプラント治療はできるの?

24.01.31

歯周病は歯を失う原因の第1位なので、歯周病で歯を失う方も数多くいますが、治療法を検討する時にインプラントをしたい方もいるのではないでしょうか。

歯を失った時の治療法の選択肢としてメリットの多いインプラント。

ただし、歯周病が悪化している方は、そのままではインプラント治療が難しい場合があります。

そこで今回は、歯周病でもインプラント治療ができるかについて詳しくご紹介します。

 

歯周病があってもインプラント治療できるの?

 

 

最初に結論をお伝えすると、歯周病がある状態ではインプラント治療はできません。

ただし、歯周病の治療をして、お口の中が改善されるとインプラント治療ができる可能性があります。

インプラントはお口の中にインプラント体を埋め込む外科手術なので、適用になるためには、条件があります。

 

・インプラント治療のためには、徹底した歯周病治療が必要

 

歯周病は、30代では7割以上の方が患っている身近な疾患ですが、歯を失う原因第1位のこわい疾患です。

歯周病の原因は、歯垢の中にひそんでいる「歯周病菌」が歯ぐきに炎症を引き起こすため、お口の中から歯垢を除去することが大切です。

そのためには、毎日の十分なセルフケアで、お口の中を清潔に保つことが重要になってきます。

 

ただし、歯周病が進行すると、歯周ポケットが深くなり、それに伴ってあごの骨を溶かしてしまいます。

歯周ポケットには、汚れが着きやすい環境になり、歯を支える骨が減ってしまうのです。

 

歯周病治療のためには、お口の中に残っている歯垢や歯石を除去します。

歯ぐきの深い部分にまで及んでいる歯石などは、麻酔をして除去することもあります。

歯周病の原因を取り除いて、お口の中を清潔に保つことができるように歯周病治療を行います。

歯周病治療を行って、お口の中が安定すると、インプラント治療をすることは可能です。

 

・歯周病のままだとインプラント周囲炎のリスクが高まる

 

歯周病は、歯垢の中にひそんでいる歯周病菌による細菌感染症です。

そのため、歯周病のままインプラント治療を行うと「インプラント周囲炎」のリスクが高くなります。

 

インプラント周囲炎は、歯周病に似ていて歯ぐきの炎症が起き、あごの骨が減ってしまう疾患です。

歯周病と違うところは、インプラントには「歯根膜」というクッションのような膜がなく、炎症をダイレクトに受けてしまいます。

そのため、自覚症状も少なく、歯周病に比べて進行が早い特徴があります。

インプラントを支えるあごの骨が減ってしまうと、インプラントがグラグラしてしまったり、最悪の場合抜け落ちてしまったりすることも。

 

そのため、インプラント周囲炎にならないようにお口の中を清潔に保つことが大切ですし、インプラントを埋入するために、歯周病の治療を完了しておく必要があります。

 

・インプラントの傷口が細菌感染しやすくなる

 

歯周病が悪化すると、歯周病菌が増殖しています。

お口の中に歯周病菌がたくさんいる状態でインプラント手術を行うと、傷口が細菌感染する可能性が高くなります。

そのため、インプラントの外科手術を行うためには、お口の中を清潔に保つことができるようになってから手術をする必要があります。

 

・歯周病であごの骨が減っている可能性がある

 

歯周病が悪化すると、歯ぐきの炎症だけでなく、あごの骨などの歯周組織まで炎症が広がります。

そうすると、あごの骨が徐々に溶かされてしまいます。

歯周病が悪化している方はあごの骨が減っている方が多くなります。

そのままの状態では、インプラント治療をすることができず、骨を再生する「骨再生療法」の手術をしてあごの骨の再生を促してから治療をする必要があります。

 

 

より安全なインプラントを目指すためには

 

 

・適切なプラークコントロールが必要

 

インプラントはむし歯にはなりませんが、「インプラント周囲炎」の可能性があります。

インプラント周囲炎になってしまうと、進行が早く、いつの間にか悪化してインプラントトラブルにつながってしまうことも。

そうならないように、お口の中の適切なプラークコントロールを身につけておく必要があります。

 

インプラント治療前から、セルフケア方法をお伝えしますので、毎日のセルフケアに役立てていただけます。

歯ブラシの当て方は、歯ぐきの境目の汚れもしっかり落とすことができるように、斜め45度位で1~2本ずつ細かく当てます。

また、歯の表面の汚れも落とすことができるように、歯に平行に当てることも大切です。

 

歯と歯の間は歯ブラシだけでは汚れが落としにくいため、デンタルフロスや歯間ブラシを併用して細かい汚れを落としましょう

歯間ブラシにはたくさんサイズがあります。

合わないサイズを使ってしまうと歯ぐきを傷めてしまうこともあります。

定期検診の際に、患者さまのお口になったサイズをご案内することもできますので、迷った際にはご相談ください。

 

・歯周病のリスクファクターを取り除く

 

歯周病の直接的な原因は「歯垢」ですが、それ以外にも間接的なリスクファクターはたくさんあります。

例えば、たばこはニコチンの影響で血管が収縮して、酸素が十分に行き渡らなくなります。

血行が悪くなると、歯ぐきが炎症を起こしていても、出血や腫れなどの症状が出にくくなり、いつの間にか進行していたということも少なくありません。

 

また、糖尿病も血糖がコントロールできなくなってしまい、免疫力が低下してしまいます。

歯周病が悪化すると血液を介して、歯周病菌が身体をめぐり血糖をコントロールする「インスリン」の働きを阻害してしまいます。

そうすると、糖尿病も悪化してしまうのです。

糖尿病が悪化すると、歯周病も悪化する相互関係があることが分かっており、インプラント治療をするためには、血糖コントロールができていることが大切です。

 

【まとめ】

 

インプラント治療をするためには、歯周病のままでは治療をすることができません。

歯周病治療をして、お口の中が安定していることが大切です。

さらに、インプラント周囲炎にならないように、お口の中を清潔に保つことも重要です。

インプラントだけでなく、ほかの歯の健康維持にもつながります。

当院では、インプラント前のお口の清掃管理や毎日のセルフケアの方法などもお伝えしますので、お気軽にご相談ください。