基礎知識

歯を失う可能性のある歯周病と糖尿病の関係性とは?

24.06.30

歯周病は、初期の段階では歯ぐきの腫れや出血などの症状があります。

しかし、自覚症状が少なく、気づいた時には進行していることも多い疾患です。

ただし、歯を失う原因第1位のこわい疾患で40代以上の方の多くが患っている身近な疾患です。

糖尿病お口と関係ないように思う方もいるかもしれませんが、糖尿病と歯周病には深い関係があることが分かってきています。

そこで今回は、歯を失う可能性のある歯周病と糖尿病の関係性についてご紹介します。

 

歯周病とは?

歯周病は、磨き残しなどのプラークの中にひそんでいる細菌が繁殖して、歯ぐきに炎症を引き起こす疾患です。

 

初期の段階では歯ぐきの炎症にとどまっていますが、進行すると顎の骨を溶かしてしまい、歯がグラグラして抜け落ちてしまうこともあります。

歯周病の直接的な原因は、「プラーク」が大きいといわれていますが、間接的な要因も関係していると考えられています。

 

歯周病の間接的な要因(リスクファクター)

インプラント歯周炎の説明

歯周病のリスクは、間接的な要因なども関係してきます。

 

・お口のリスクファクター

 

歯ぎしり・口呼吸などのくせ

歯ぎしりは、寝ている時に起きやすく、歯に負担をかけやすい悪習癖です。

無意識のため、非常に強い力がかかりやすく、体重以上の力がかかってしまうこともあります。

そのため、歯周病の方は歯ぎしりをすると、強い力がかかり、歯周病を悪化させてしまいます。

 

通常は、鼻で呼吸をする鼻呼吸が正しいのですが、口呼吸がくせになっている場合があります。

そうすると、口の中が乾燥しやすく、唾液の働きが弱くなってしまいます。

唾液には、汚れを洗い流す作用や抗菌作用などがあるため、口の中が乾燥すると細菌が繁殖しやすくなります。

そのため、むし歯や歯周病のリスクが高くなってしまいます。

 

合っていない被せ物

被せ物が時間の経過などで、少しずつ歯を被せ物の間に段差などができてしまう場合があります。

その部分は汚れが残りやすく、歯周病のリスクを高くしてしまいます。

 

歯並び

歯並びの不正がある場合には、歯が重なり合っている部分などに汚れが残りやすい環境です。

その部分にプラークがたまってしまい、歯周病のリスクが高くなります。

 

・全身・生活習慣のリスクファクター

 

喫煙

喫煙は歯周病のリスクファクターです。

たばこに含まれているニコチンは血管を収縮して酸素や栄養が十分に行き渡らなくなります。

また、唾液が減少するため、細菌が増えやすく歯周病のリスクが増えます。

 

糖尿病

糖尿病は、歯周病と深い関係があることが分かってきました。私たちは、日常生活を行うために必要なエネルギーを食事から摂取しています。

糖分を含む食べ物は、小腸から吸収されて血液中に吸収されます。

 

食事によって、血液中に糖分が増えると「インスリン」というホルモンが分泌されて、血糖値をコントロールする働きがあります。

 

しかし、糖尿病はインスリンの働きが弱くなり、血糖のコントロールが難しくなる疾患です。

高血糖の状態が続くと、血管に負担がかかり様々な合併症を引き起こす代謝の疾患です。

 

・1型糖尿病

膵臓(すいぞう)働きが弱くなり、インスリンの分泌が難しくなります。

インスリンが絶対的に不足しているため、インスリンを外部から補充する必要があります。

 

・2型糖尿病

主に生活習慣が原因で発症する糖尿病で、Ⅰ型糖尿病はインスリンの分泌が難しいのに対して、Ⅱ型糖尿病はインスリンを分泌する能力があります。

しかし、糖分の摂取量に対してインスリンの分泌が追い付かず、血糖値を十分に下げるだけの働きが足りないためです。

 

また、インスリンの分泌は行われているにも関わらず、何らかの原因で血糖が下がりにくくなっており、インスリンの機能が十分に発揮できていない場合もあります。

 

そうすると、血糖を下げようとして、膵臓はインスリンを分泌しようとして過剰にインスリンを分泌するようになります。

そうすると、インスリンの細胞が疲れてしまい、分泌する能力が弱くなってしまいます。

 

日本人はもともとインスリンの分泌が弱いと言われていますが、さらに糖分の多い食生活が糖尿病の発症につながってしまいます。

 

糖尿病と歯周病の関係

治療法について

口の中の変化

糖尿病の方は、唾液の分泌が弱くなってしまいます

そうすると、口の中が乾燥しやすくなってしまい、細菌が繁殖して歯周病が発症したり、悪化したりします。

 

抵抗力が弱くなる

糖尿病になると、身体の免疫機能が低下して様々な感染症のリスクが高くなります。

細菌感染すると、ダメージを受けた組織の回復が遅れてしまい、高血糖による血管の負担でより歯周病になりやすい環境になります。

 

高血糖による炎症の増加

高血糖状態が続くと、白血球機能だけでなく免疫機能も低下して、歯周病を発症しやすくなります。

また、歯周病を発症すると炎症性物質がインスリンの効きを悪くしてしまいます。

 

歯周病を安定させるためにはプラークコントロールが重要

歯周病を安定させるためには、口の中を清潔にしてプラークコントロールをすることが大切です。

また、高血糖の状態が歯周病のリスクを高めるため、医科と歯科で連携して歯周病と糖尿病をコントロールする必要があります。

 

令和6年の診療改定で、歯周病の安定期治療の「ハイリスク加算」が追加されました。

糖尿病の患者さまに対して歯科の受診の推奨を行うことが新設されました。

 

歯周病と糖尿病は相互関係があり、お互い治療をすることで口の中だけでなく、糖尿病も安定しやすいことが分かっています。

 

歯を失わないために予防をしましょう

歯周病は自覚症状も少なく、いつの間にか進行していることも多いため、定期的に予防することが大切です。

歯周病で歯を失わないためには、毎日のプラークコントロールが重要で、口の中を清潔に保つことが大切です。

 

しかし、毎日磨いていても汚れは残ってしまう部分もあるため、その部分は定期検診のクリーニングで落としましょう。

クリーニングの際には、汚れが着いている部分を確認し、その部分の磨き方などもお伝えします。

 

【まとめ】

歯周病と糖尿病は関係ないようで、相互関係があります。

歯周病菌が悪化すると、血液を介して全身も巡り、様々な臓器に悪栄養を及ぼします。

そのため、歯周病が悪化しないようにプラークコントロールをすることが大切です。

自宅でのセルフケアに加え、定期的な検診でお口の健康を維持しましょう。