基礎知識

妊娠中にインプラント手術はできるの?

24.08.31

妊娠中はカフェインや薬を控えるなど、赤ちゃんに影響がないように配慮する方も多いのではないでしょうか。

妊娠中はいつもと体調も異なり、負担がかからないようにリラックスして過ごすことが望ましいとされています。

歯を失った時の治療法は、インプラント、ブリッジ、入れ歯がありますが、インプラント手術を妊娠中にできるかについて詳しく解説させていただきます。

 

妊娠中の歯科治療とは

妊娠中はホルモンバランスの変化も大きく、体調も変わりやすい時期です。

いつも違う状況のため、些細なことでも体調の変化につながる可能性があります。

また、身体の体調も変化しやすい時期ですが、気持ちのバランスが不安的になりやすい時期でもあります。

そのため、すぐに対応が必要な状況ではない段階の治療は、検討される場合が多くなります。

一般的な歯科治療に関しては、妊娠中期(妊娠16~28週まで)の比較的体調が安定してくる時期であれば、歯科治療を受けることができます。

 

この時期であれば、麻酔やレントゲンのリスクは少ないと考えられています。

また、今後生まれてくる赤ちゃんのために、お口の中の環境を整えておくことも大切で、赤ちゃんへの悪影響を考慮して、むし歯のない環境作りがよいとされています。

ただし、体調に問題がなく、安定している時期に治療が終わることが考慮されるでしょう。

 

妊娠中のインプラント手術のリスク

妊娠中のインプラント手術のリスクについてご紹介します。

 

  • 麻酔薬や投薬のリスク

歯科で通常のむし歯治療にも麻酔は使われますが、インプラント手術は外科手術を行います。

そのため、むし歯治療で使われる麻酔の量より、より多くの麻酔が必要になります。

また、投薬に関しても外科手術を行った後のため、腫れや出血を抑えるために抗生物質や鎮痛剤など複数の薬の服用が必要になります。

 

麻酔や薬剤が赤ちゃんに必ずしも悪影響を与えるわけではありませんが、量や種類が多くなる場合には、妊娠中は控える方が安心でしょう。

 

  • レントゲンやCT撮影のリスク

インプラント手術の際には、顎の骨の状態を確認するためにレントゲン撮影やCT撮影を行います。

 

インプラントがきちんと埋入できているかなどの確認をするために、埋入後もレントゲン撮影をします。

通常のレントゲン撮影は問題ないとされていますが、回数も多くなります。

また、CT撮影はレントゲン撮影より被ばく量も多くなります。

小さな胎児は、大人より影響がある可能性があります。

 

そのため、レントゲンの撮影回数やCT撮影などをする必要も考慮すると、被ばく量がやや多くなるため、妊娠中のインプラント手術は控えた方が良いといえるでしょう。

 

  • 出血による赤ちゃんへの影響

インプラント手術は外科手術を伴うため、通常よりも出血が多くなります。

通常は問題ない程度の出血でも、妊娠中はホルモンの影響で出血すると子宮を収縮させます。

そうすると、早産を誘発させてしまう可能性があるため、出血が多い外科手術は控えることが望ましいとされています。

 

  • つわり時の負担

妊娠中のつわりは個人差が多いのですが、においや口の中の刺激で体調が悪くなるケースが多くなります。

つわりが原因で、食事や歯磨きも難しいことも少なくありません。

このような状態では、通院も難しくインプラント手術も困難でしょう。

 

また、つわりの症状が一旦落ち着いた場合でも妊娠中期~後期の期間につわりの症状が出てくる場合もあります。

インプラント治療を開始してから治療が難しくなったということにならないように出産後の体調が安定してからインプラント手術をスタートするとよいでしょう。

 

  • 寝た姿勢の負担

妊娠中は、お腹が大きくなってくるとほかの臓器が圧迫されます。

また、しゃがむ体制が大変だったり、仰向けの姿勢が圧迫されたりしてつらいこともあります。

歯科治療は仰向けの姿勢が多いのですが、インプラント手術は一般的な歯科治療より時間がかかる傾向になります。

血管が圧迫されて体調不良が起きる可能性もあるため、治療中の体勢の負担も考慮して妊娠中は、インプラント治療を控えた方がよいでしょう。

 

インプラント治療をスタートした後に妊娠が分かった場合

インプラント治療がスタートして妊娠が分かった場合には、まずは歯科医師と産婦人科の医師に相談しましょう。妊娠中はほかの薬や治療法に変更する場合もあります。

双方の状態を把握して、どのように治療を進めていくのが良いか検討します。

 

どの程度治療が進んでいるかによって異なりますが、インプラント手術がまだ終わっていない場合には、手術の時期を延期する可能性があります。

ただし、歯の失った部分をそのままの状態にしておくことはありません。

審美的な問題だけでなく、隣の歯が内側に少しずつ寄ってきてしまうことがあるため、治療をスタートしようとした時にスペースが少なくなってしまうことがあるからです。

 

また、インプラント手術が終わっている場合には、出血が少ない型取りなどの体調を見て行う場合があります。

これらは、患者さまのお口の状況や妊娠週数、健康状態によっても異なりますので、妊娠が分かった時はすぐに確認しましょう。

 

出産後のインプラント治療のリスクはあるの?

出産後も授乳中は、インプラント手術を控えた方が良いと考えられています。

インプラント治療後も抗生剤や鎮痛剤などの薬を服用する必要があるためです。

 

痛みや腫れを抑えるためには、処方された薬を服用する必要があります。

授乳中でも服用ができる薬はありますが、薬によっては母乳にわずかな影響があると考えられています。

 

また、出産後も体調や環境の変化に慣れるまでに時間がかかることが多いため、3ヶ月程度経過してからインプラント手術を検討することをおすすめします。

 

【まとめ】

妊娠中はつわりを始め、さまざまな体調の変化があります。

また、インプラント手術も外科手術を伴うため、通常のむし歯治療と比較すると出血などが考えられます。

普段は問題ない状態でも、子宮の収縮につながったり、赤ちゃんへの影響があったりする可能性がある場合もインプラント手術は延期するようにお願いしています。

赤ちゃんを出産してから落ち着いた環境でインプラント治療をスタートしましょう。