基礎知識

インプラントと睡眠時無呼吸症候群の関係とは?歯ぎしりがインプラントに与える影響

25.04.30

「インプラント治療を希望しているけれど睡眠時無呼吸症候群と診断されて歯ぎしりをしている……。」

インプラント治療を考えていても、不安な要因がある場合には迷ってしまうこともあると思います。

そこで今回は、インプラントと睡眠時無呼吸症候群の関係について詳しくご紹介します。

 

 

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?

 

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が何度も止まる、または極端に浅くなる病気で、「いびき」や「日中の眠気」で気づかれることが多い症状です。

特に代表的なのが「閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSA)」で、これは舌や喉周辺の筋肉が緩み、気道がふさがることによって引き起こされます。

放置していると、睡眠中の酸素が少なくなるため、

・高血圧・糖尿病

・慢性的な疲労感

・心臓病や脳血管障害 といった全身疾患を引き起こすリスクもあります。

 

さらに、睡眠時無呼吸症候群の多くの患者さんに共通して見られるのが、「睡眠中の強い歯ぎしり(ブラキシズム)」です。

 

 

睡眠時無呼吸症候群と歯ぎしり(ブラキシズム)の関係

インプラント歯周炎の説明

睡眠時無呼吸症候群の関係と歯ぎしりには密接な関係があるとされています。

閉塞型睡眠時無呼吸(OSA)の場合、睡眠中に気道がふさがれることで脳が「覚醒反応」を起こし、それにともなって歯ぎしりや食いしばりが誘発されることがあります。

 

つまり、睡眠時無呼吸症候群による一時的な呼吸停止を回避しようとする体の反応として、顎の筋肉が無意識に動くことが歯ぎしりの一因になっていると考えられています。

このように、睡眠時無呼吸症候群と歯ぎしりは併発しやすく、インプラントへの影響が出る可能性があるため、対処していく必要があります。

 

歯ぎしりとインプラントの関係

インプラント治療は、顎の骨にインプラントを埋入して人工歯根として、その上に被せ物をする治療です。

そのため、インプラント部分に過度な力が加わらないように、噛む力を細かく調整する必要があります。

強い力が加わってしまうと、インプラントを支えている歯周組織やインプラントに負担がかかって、インプラントトラブルにつながる可能性もあります。

 

そのような状態にならないように、咬合圧を十分に調整する必要があり、歯ぎしりがある場合には、対応する必要があります。

 

歯ぎしりを放置してインプラント治療をすると?

 

インプラントは天然歯とは異なり、歯根膜という衝撃を緩和する膜がありません。

そのため、強い咬合力が加わるとそのままダメージを受けやすくなります。

また、インプラントは骨と直接結合をしているため、過度な力が加わると、下記のようなトラブルの原因になることがあります。

 

・インプラントのゆるみ・脱落

インプラントと骨が結合するまでに、一般的に2~4ヶ月程度の期間がかかります。

その間に強い力が加わり続けると、インプラントと骨が十分に結合できず、インプラントがきちんと定着しなかったり、脱落したりするおそれがあります。

 

・被せ物の破損やねじのゆるみ

歯ぎしりで強い負荷がかかると、被せ物に負担がかかりやすくなります。

力のかかり方によっては、被せ物が破損してしまったり、ねじのゆるみにつながったりすることがあります。

 

・インプラント周囲炎の悪化のリスク

インプラントは歯周組織に支えられていますが、強い力がかかり続けると炎症を引き起こすことがあります。

歯ぎしりで継続的に力が加わると、その炎症が悪化することがあります。(インプラント周囲炎の悪化)

 

睡眠時無呼吸症候群や歯ぎしりのある方がインプラント治療を受ける場合の注意点

 

睡眠時無呼吸症候群や歯ぎしりがある場合でも、絶対にインプラント治療ができないわけではありません。

その症状によって対処することで、インプラント治療が可能になるケースもあります。

そのためには、下記のような対策が必要になります。

 

歯科医師に相談する

過去に睡眠時無呼吸症候群や歯ぎしりがあると診断された場合には、カウンセリングの時に歯科医師に伝えましょう。

また、その治療で寝る時に使用しているナイトガードや睡眠時無呼吸症候群用のマウスピースを使用している場合にはその旨も伝えてください。

 

骨の状態や咬合力をチェック

睡眠時無呼吸症候群は酸素が少なくなるため、骨の代謝に影響が出る場合があります。

そのため、レントゲンやCTで骨の評価がする必要があります。

また、歯ぎしりをしている可能性がある方は、咬合圧を評価します。

 

咬合力に応じたインプラントの設計

奥歯を失った場合には、咬合力に応じてインプラントの本数を増やすなどの対応が必要になる場合があります。

また、咬合圧に応じた咬合調整をする必要があり、インプラントの部分に過度な力が加わらないようにする必要があります。

 

ナイトガード(マウスピース)の併用

睡眠中の歯ぎしりを抑制・緩和するため、治療後もナイトガードの使用を継続するようにしましょう。

インプラント治療後は噛み合わせのバランスが変わるため、作り直しが必要な場合があります。

 

睡眠の質とインプラントの成功率は関係する?

 

睡眠時無呼吸症候群は継続すると、睡眠の質が低下するだけでなく、睡眠中に十分な酸素が行き渡らないため、血管に負担がかかります。

そのため、高血圧や糖尿病、心筋梗塞、脳卒中などのリスクが増える疾患です。

また、良質な睡眠は免疫力に関係しているため、骨との結合やインプラントの成功率に影響が出る場合があります。

 

睡眠時無呼吸症候群は、歯科単独では管理が難しいこともあるため、歯科だけでなく医科との連携が必要になります。

CPAP装置を使用している方や、現在治療中の方は、主治医と歯科医師の間で情報を共有しておくと安心です。

 

【まとめ】

睡眠時無呼吸症候群や歯ぎしりといった“見えないリスク”が、インプラントに与える影響は及ぼす場合があります。

しかし、事前にこれらのリスクを把握し、咬合設計やナイトガードの使用、医科との連携を行うことで、安全にインプラント治療を受けることは可能です。

「自分はインプラントができるか不安……。」

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