基礎知識

“歯が抜けた原因が歯周病”だった方へ インプラント治療前に確認すべきこと

25.05.30

「歯がグラグラして抜けてしまった……。」

「歯周病で抜歯になったけど、インプラントはできるのかな?」

歯を失う原因の中で、第1位は歯周病であることをご存じですか?

第2位の虫歯よりも多く、特に40代以降の歯の喪失原因の多くが歯周病によるものといわれています。

そして、歯を失った時の選択肢として人気なのが「インプラント治療」です。

しかし、歯周病が原因で歯を失った方の場合、インプラント治療で注意が必要です。

そこで今回は、歯周病で歯を失った方がインプラントを検討する前に知っておくべきポイントを、詳しく解説します。

 

歯を失った原因が歯周病だと、何が問題?

 

歯周病は、初期の段階では歯ぐきの腫れや出血などの症状ですが、進行すると歯を支える骨が溶けていく病気です。

見た目では歯ぐきの腫れや出血が目立ちますが、歯ぐきの内部では骨がじわじわと破壊されていく沈黙の病ともいわれます。

歯周病で歯が抜けた場合、歯を支える骨がかなり減っている状態の可能性が高く、そのままではインプラントが支えられないこともあります。

骨の状態によっては、骨造成の手術を行って骨の再生を促した上で治療が必要です。

 

その場合のインプラント治療における主なリスク

・顎の骨が足りず、そのままではインプラントが埋入できない

インプラント治療では、人工歯根を顎の骨に埋め込みます。

しかし、歯周病によって骨が吸収されていると、インプラントを安定して固定することが難しくなる場合があります。

そのため、骨が足りない場合には、GBR(骨造成)やサイナスリフトといった補助的な骨再生処置が必要になることがあります。

これにより、治療期間が延びたり、費用が増えたりする可能性もあります。

 

・歯周病菌の再感染による「インプラント周囲炎」のリスク

インプラント手術できちんと埋入できたとしても、口腔内に歯周病菌が残っていたり、ケアが不十分だったりすると、インプラントの周囲に炎症が再発するリスクがあります。

この状態は「インプラント周囲炎」と呼ばれ、歯周病と同じように、歯ぐきの腫れや出血、そして最終的には骨の吸収を引き起こします。

しかも、インプラントには「歯根膜」がなく、炎症がダイレクトに骨へ波及しやすいため、進行が速く、治療も難しいのが特徴です。

 

・手術後に骨吸収が進行し、インプラントが脱落する可能性も

歯周病の既往がある場合、たとえインプラント手術が成功しても、セルフケアが不十分で術後の管理を怠ると再び炎症が起こり、周囲の骨が少しずつ溶けていくことがあります。

それが続けば、せっかく入れたインプラントがグラつき、最悪の場合には抜け落ちてしまうことにもなりかねません。

 

インプラント治療前に確認すべき3つのこと

1 歯周病の治療行って状態が安定しているか?

インプラント治療を行う前には、必ず歯周病の治療と安定化が必要です。

仮に歯周病が残っている状態でインプラントを入れると、インプラント周囲が感染し、インプラント周囲炎という新たな病気を引き起こすリスクがあります。

 

特に注意が必要なのは以下のような方

・過去に歯周病で複数の歯を失っている

・他の歯ぐきにも出血や腫れがある

・歯のぐらつきが複数本に及ぶ

・口臭が気になる

 

インプラント治療の前に、歯周基本治療(スケーリング・ルートプレーニング・ブラッシング指導など)を行い、炎症をコントロールする必要があります。

 

2 骨の状態は大丈夫?CTでの精密検査が必要

歯周病で歯を失っている方は、骨が減少しています。

骨が吸収されていると、インプラントを支える“土台”が不十分で安定しにくいことがあります。

このような場合には、CT画像での三次元的な骨の厚みや高さ・骨密度の診断が必要です。

 

CTによる検査では以下が確認できます

・神経や上顎洞との距離

・骨の質(密度)

・顎の骨の厚みや高さ

 

骨が足りないと診断された場合は、GBR(骨造成)やサイナスリフトといった骨の再生を促す外科処置を検討します。

 

3 歯周病の再発を防ぐ生活習慣はできているか?

インプラントは人工物ですが、周囲の歯ぐきや骨は体の一部です。

そのため、歯周病が再発すれば、インプラント周囲の組織も歯周病菌が感染する可能性があります。

 

とくに以下のような習慣は再発のリスク要因になります。

・不十分なブラッシング

・喫煙習慣(タバコは歯周病とインプラントのリスクファクター)

・定期検診を受けていない

・糖尿病などの全身疾患のコントロールができていない

 

インプラント治療を受ける前に、これらの生活習慣を見直し、セルフケアとプロケアの両立を目指すことが大切です。

 

インプラントは“歯周病経験者”こそ慎重に

 

過去に歯周病を経験し、それが原因で歯を失ってしまった方も、インプラント治療は十分に可能です。

しかし、歯周病が再発しやすい口腔内環境にあることを理解し、他の方以上に慎重な対応が必要になります。

歯周病により歯を失ったということは、細菌の感染に対するリスクが高く、また骨の状態にも影響が出ている可能性があるということです。

「もう一度しっかり噛めるようになりたい」「見た目を取り戻したい」という願いを叶えるためには、治療前の準備、治療中の配慮、治療後の継続的な管理の3つが重要です。

 

歯周病経験者のインプラント成功のポイント

・歯周病治療を完了させてからインプラントへ

・骨の検査を正確に行う

・生活習慣の改善を意識する

・定期的なプロによるメンテナンスを継続する

 

【まとめ】

歯周病が原因でも、インプラントは“あきらめなくていい”ですが、その原因を正しく理解し、整えること”が成功のカギになります。

歯周病で歯を失った方にとって、インプラントは天然歯のような噛み心を手に入れる1つの選択肢です。

正しい治療計画の立案と、継続的なサポート体制があってこそ、インプラントは本来の力を発揮します。長く快適に使い続けるためにも、まずは歯周病のコントロールから始めてみましょう。

 

「歯ぐきの状態に不安がある」「骨が足りるかわからない」という方も、お気軽にご相談ください。

当院では、インプラント治療を数多く行っていますので、インプラントに関する疑問やご質問も合わせてお待ちしています。