インプラントコラム
COLUMN
シニア世代のためのインプラント治療と介護の現場 ― 知っておきたいポイント
25.08.26
高齢化社会に伴い、インプラント治療を検討するシニア世代は年々増えています。
インプラントは「しっかり噛める喜び」「見た目の若々しさ」を取り戻せて、入れ歯の不満を抱える方にとってより良い口内環境のための選択肢です。
しかし同時に、介護を受けるようになったときに「ケアは大変ではないか?」と不安を感じる方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、高齢者のインプラント治療と介護現場での対応について、知っておくべきポイントを解説します。
シニアの方がインプラントを選ぶ理由
天然歯のような噛む力を維持できる
入れ歯は取り外しをするため、どうしても「ズレ」や「浮き上がり」の可能性があります。
特に硬い肉やお煎餅、繊維質の野菜などは噛み切りにくく、食事のしにくさを感じる方もいらっしゃいます。
その点、インプラントは顎の骨と直接結合しているため、まるで自分の歯のような安定感が期待できます。
天然歯と同じような咀嚼力が得られることで、食事の幅が広がり、栄養の偏りを予防できます。
結果的に、体力の維持や健康寿命を延ばすことにつながると考えられています。
発音や見た目が自然
歯を失うと、「サ行」「タ行」などの発音が不明瞭になることがあります。
また、合わない入れ歯を使っていると、会話中に外れる不安から思いきり話せなくなることもあります。
一方、インプラントはしっかり固定されるため、発音が安定しやすく、人前での会話や笑顔にも自信が持ちやすくなります。
さらに、歯を失ったまま放置すると口元がくぼみ、老けた印象を与えやすいですが、インプラントは骨や歯ぐきのボリュームを維持しやすく、若々しい口元を保ちやすい点も大きなメリットです。
骨や歯並びの健康を保ちやすい
歯を失ったまま放置すると、噛む刺激が伝わらなくなり、その部分の顎の骨が少しずつ痩せてしまいます。
入れ歯やブリッジでは失った部分の骨に直接力が加わらないため、長期的には骨の吸収が進んで顔立ちが変化することもあります。
一方、インプラントは顎の骨に直接力を伝えるため、骨の吸収を抑え、顎の健康を維持する効果が見込めます。
また、ブリッジのように両隣の健康な歯を削る必要もないため、他の歯に負担をかけずに治療が可能です。
そうすると、残存歯の寿命を延ばし、全体の歯並びを長く安定させやすいのです。
シニア世代ならではの注意点
1 全身疾患との関係
高齢者の方は糖尿病や高血圧、骨粗しょう症などの持病を抱える方が少なくありません。インプラント手術は外科的処置を伴うため、内科医と歯科医の連携が必要です。
服薬内容によっては手術が難しい場合もあるため、必ず事前に医師へ相談しましょう。
2 骨の量や質
インプラントは顎の骨に埋め込むため、骨の量や硬さが重要です。
しかし、高齢になると骨密度が低下している場合があり、その場合は骨造成やサイナスリフトといった骨造成手術が検討されます。
3 術後のケア能力
インプラントは歯周病に似た インプラント周囲炎 という病気にかかるリスクがあります。これは歯垢の中の細菌が原因で、歯ぐきや骨が炎症を起こし、インプラントトラブルにつながる場合があります。
そのため、天然の歯と同じように 毎日の丁寧なブラッシング が必要で、歯間ブラシやフロスなどを使い、細かい汚れを除去することが重要です。
ただし、高齢になると、手先の器用さが落ちたり、視力の低下で磨き残しが増えたりします。
また、認知症が進行するとセルフケア自体が難しくなる場合もあります。このような場合には、介護者やご家族が清掃をサポートする必要があります。
介護現場でのインプラント対応のポイント
・清掃のしやすさ
インプラントは天然歯と同じようにブラッシングや歯間清掃が欠かせませんが、要介護状態になると自分で清掃することが難しくなる場合があります。
そうすると、介助者が清掃を代行するケースが増えます。
介護者が扱いやすいように、歯ブラシのヘッドが小さめのものや、持ち手が工夫された歯ブラシ、歯間ブラシ、ワンタフトブラシを選ぶことが望ましいです。
また、インプラント周囲は汚れ残ると炎症を起こしやすいため、清掃補助具(口腔ケア用ジェルや電動ブラシ)を活用し、清掃性を高めることが重要です。
インプラントが清掃しやすい設計であれば、介護者の負担が軽減し、トラブル予防にもつながります。
・誤嚥リスクの軽減
高齢者にとって誤嚥性肺炎は大きなリスクですが、入れ歯の場合は清掃低下による細菌の増殖や入れ歯によって舌の筋力が低下して嚥下機能が低くなる可能性があります。
一方でインプラントは顎の骨に固定されているため、咀嚼機能を維持しやすく、食べ物を細かく砕けるため、飲み込みやすい状態にできる点も嚥下機能の低下を補う効果があります。
しっかり噛めることは、消化を助け、結果的に誤嚥のリスクを下げることにもつながります。
・定期検診と介護施設との連携
介護施設では入れ歯の調整や簡単な修理に対応することができる場合が多いですが、インプラントは専門的な管理が必要です。
特に「インプラント周囲炎」は進行すると抜去が必要になるため、定期的な歯科医院でのメンテナンスが重要です。
介護施設と歯科医院が連携し、訪問歯科診療や定期検診を組み込むことで、トラブルを早期に発見・対応できます。
また、介護スタッフが日常的に観察する際のチェックポイント(歯ぐきの腫れ、出血、口臭など)を共有しておくと、より安心したケア体制が整います。
シニア世代がインプラント治療を選ぶ際のポイント
・主治医と歯科医師の連携を確認する
持病や薬の影響を事前に調整することが大切です。
・家族や介護者とも話し合う
将来的に介護を受ける可能性を考え、ケアのしやすさも検討しましょう。
・長期的なメンテナンス計画を立てる
定期健診・クリーニングの体制が整っている歯科医院を選ぶことがインプラントを長く良い状態で維持することにつながります。
【まとめ】
インプラント治療はシニア世代にとって、「食べる楽しみ」や「会話の快適さ」を守る大切な選択肢です。
一方で、介護を受ける時期になれば清掃や通院のサポートが必要になることもあります。
大切なのは、 「今の快適さ」と「将来の介護」を見据えた治療計画を立てることです。
主治医・歯科医・家族が連携しながら判断すれば、高齢者の方にとってインプラントより良い治療法となるでしょう。
インプラント治療をご希望の方はお気軽にご相談ください。