インプラントコラム
COLUMN
インプラントを長持ちさせるための食事習慣と噛み方のコツとは?
25.08.26
インプラントは失った歯を補う治療法の中でも「天然歯のようにしっかり噛める」「見た目が自然」というメリットがあります。
しかし、インプラントは一度埋入すれば一生安心というわけではありません。
毎日のケアや食習慣、咀嚼の仕方によってインプラントの寿命が大きく左右されます。
そこで今回は、インプラントを長持ちさせるために意識したい食事と咀嚼習慣について詳しく解説します。
インプラントは「噛み合わせ」に強く影響される
インプラントは人工歯根を顎の骨に埋め込み、その上に被せ物を装着する構造です。
天然の歯とは違い、歯根膜が存在しないため「噛んだ力を吸収・分散するクッション機能」がありません。
そのため、食事中に過度な力がインプラント部分にかかると、インプラントや周囲の骨にダメージが蓄積しやすい特徴があります。
そのため、正しい咀嚼習慣を身につけることは、インプラントを守るためにも大切なポイントです。
インプラントに負担をかけやすい食べ物とは?
インプラントを長持ちさせるためには、避けたい食材や習慣もあります。
硬すぎる食品 氷・ナッツ・フランスパンの硬い部分
氷をガリガリ噛んだり、硬すぎる食品を食べたりするとインプラント体や被せ物に負担がかかります。
粘着性の強い食品 キャラメル・餅
キャラメルや餅などの粘着性のある食べ物は、引っ張られる力がかかるため、インプラント部分に負担になることがあります。
糖分の多い食品 チョコレート・キャンディー・ジュース
インプラントはむし歯にはなりませんが、糖質に含まれる細菌は増殖します。
そうすると、インプラント周囲炎のリスクが高くなりますし、ほかの歯のむし歯のリスクも高めます。
糖分の多い食品は、時間を決めて摂取するようにして、その後は歯磨きをしましょう。
日常的にこれらの食品を摂取する場合は、よく噛んで小さくしてから食べる、食後に丁寧な清掃を行うなどの工夫が必要です。
インプラントを守る食事の基本ポイント
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よく噛んで食べる
一口で何度も噛むことは、消化吸収を助けるだけでなく、インプラントにかかる瞬間的な力を和らげる効果が期待できます。
天然歯であれば歯根膜が力を分散しますが、インプラントにはそのクッションがないため、噛む衝撃が直接骨に伝わります。
そこで「よく噛む」ことが重要になります。
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柔らかすぎる食事に偏らない
インプラント手術の直後は、患部への負担を避けるために柔らかい食事を食べるように伝えられますが、治癒が進んだ後もずっと軟らかい食べ物ばかり食べていると、咀嚼回数が減り、顎の筋肉や骨に十分な刺激が伝わりません。
そうすると、骨の代謝が低下してしまい、インプラントの安定性にも悪影響を及ぼす可能性があります。
おすすめは、適度に噛みごたえのある食材を取り入れることです。例えば、根菜類(にんじん・ごぼう)、繊維質の多い野菜(キャベツ・ブロッコリー)、大豆製品(厚揚げ・納豆)などは噛む回数を自然に増やしやすくなります。
食材を「やわらかく煮る」のではなく「少し歯ごたえを残す」調理を意識すると、無理なく咀嚼回数を確保できるでしょう。
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栄養バランスを意識する
インプラントは「人工物」ですが、その土台を支えるのは周囲の骨や歯ぐきです。
そのため、これらの組織を健康に保つバランスの良い栄養摂取をすることは大切です。
・カルシウム・ビタミンD
骨の形成・維持に大切な栄養素です。
牛乳・チーズ・小魚・きのこ類などで補えます。
・タンパク質
歯ぐきや粘膜の修復を支える栄養素です。
肉・魚・卵・豆類をバランスよく摂取することが大切です。
・ビタミンC
歯周組織の抵抗力を高め、歯ぐきの炎症を防ぎます。
野菜や果物(特にブロッコリー・キウイ・柑橘類)に豊富に含まれています。
咀嚼習慣を見直すポイント
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片側噛みをしないようにする
インプラントが片側だけに入っている場合、その部分で噛む頻度が増える場合があります。
しかし、片側噛みが習慣化すると噛み合わせのバランスが少しずつ崩れやすく、インプラントのある部位に過度な力が集中しやすくなる場合があります。
そうすると、インプラント周囲炎や噛み合わせのズレ、顎関節症のリスクを高める可能性があります。
この状態を予防するためには、バランス良く左右で噛むようにすることが大切です。
たとえば、一口ごとに左右交互に噛む習慣をつける、噛みやすい柔らかい食材から両側噛みを始めるなど、小さな工夫から取り入れると自然にバランスが整いやすくなります。
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ゆっくり食事をする
忙しい生活習慣で早食いになっている方も多いですが、この習慣はインプラントに大きな負担をかけます。
十分に咀嚼せずに飲み込むと、噛む回数が減り、一口ごとに強い力で噛み砕く必要が出るため、インプラントや周囲の骨に過剰な負荷がかかります。
さらに、消化不良や胃腸への負担にもつながります。
改善方法としては、「ひと口30回」を目安に噛むのがおすすめです。
慣れるまで噛む回数が多いと感じる場合もありますが「テレビのCMが流れる間に1口分を噛む」など、生活に取り入れやすい目安を作ると続けやすくなります。
また、箸を一度置いてから飲み込むようにすると、自然とペースが落ちて、噛む回数が増えやすくなります。
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食事姿勢を整える
食べ方だけでなく、食事中の姿勢も咀嚼習慣に影響を及ぼします。
猫背のまま食事をすると、顎の動きが制限され噛み合わせに偏りが出やすくなります。
また、口を開けたまま噛む「口呼吸習慣」も、唾液の分泌を減らし、インプラント周囲炎やむし歯リスクを高める要因になります。
改善するためには、以下の点を意識すると良いでしょう。
・椅子に深く腰掛け、背筋を伸ばす
・足を床につけ、安定した姿勢で食べる
・口をしっかり閉じて鼻呼吸を意識する
このような正しい姿勢は、噛む力をバランスよく分散させるだけでなく、消化や呼吸機能にも良い影響を与えます。
インプラントを長持ちさせるための生活習慣
・禁煙
喫煙は血流を悪化させ、インプラント周囲炎の大きなリスクになります。
・定期検診
かみ合わせのバランスの状態や清掃状況をチェックしてもらうことで、トラブルを早期に発見しやすくなります。
・ストレス管理
歯ぎしり・食いしばりはインプラントに大きな負荷をかけるため、マウスピースの活用やリラックス法も効果的です。
【まとめ】
インプラントを長持ちさせるためには、日常の食事と咀嚼習慣の見直しが大切です。
硬すぎる食品や片側噛みなどの悪習慣を避け、よく噛んでバランスの良い食生活を送りましょう。
さらに、禁煙や定期検診を組み合わせれば、インプラントの寿命を延ばすことにつながります。
インプラントは大切な投資だからこそ、正しい習慣を続けて、できるだけ長く快適に使い続けましょう。