インプラントコラム
COLUMN
インプラントで金属アレルギーが心配?ジルコニアインプラントという選択肢
25.10.31
インプラント治療といえば、チタン製の人工歯根が一般的です。
一方で、近年は「金属を避けたい」「アレルギーが不安」という理由から、ジルコニアインプラントが注目を集めています。
そこで今回は、金属を使用しない「メタルフリーインプラント」としてのジルコニアの特徴やメリット、そして治療する前に知っておきたい注意点について解説します。
ジルコニアインプラントとは?

ジルコニアインプラントとは、金属を一切使用しないセラミック素材の人工歯根のことです。
ジルコニアは、セラミックの一種であり、非常に高い強度と耐久性、そして自然な白さを兼ね備えています。
従来主流だったチタン製インプラントと異なり、金属特有の光沢がないため、歯ぐきの色にも自然になじみやすく、審美性に優れているのが特徴です。
そのため、前歯など見た目を重視する部位や、金属アレルギーに配慮したい方に選ばれるケースが増えています。
チタンインプラントとジルコニアインプラントの違い

・素材
チタンインプラントは身体になじみやすいチタンですが、金属を使用しています。
ジルコニアインプラントは、セラミックを使用しています。
・アレルギーリスク
チタンは心臓ペースメーカーなど医科でも使用されていて、生体親和性の良い素材ですが、まれに金属アレルギーの報告があります。
ジルコニアは金属を含まないため、アレルギーの心配がありません。
・強度・実績
チタンインプラントは長年の臨床実績があり信頼性が高いです。
ジルコニアインプラントの実績は浅いですが、素材や構造の改良が進んでいます。
・費用の目安
チタンインプラントは、インプラントの一般的な価格です。
ジルコニアインプラントは、チタンよりやや高額になる傾向があります。
チタンが「信頼と実績のある素材」なのに対し、ジルコニアは「審美性とアレルギー配慮を重視した新しい選択肢」といえます。
ジルコニアインプラントのメリット

・白く自然で、審美性に優れている
ジルコニアは白色のセラミック素材で、歯や歯ぐきの色に自然になじみやすい特徴があります。
そのため、歯ぐきが薄い方でも金属のように色が透けることがなく、前歯や笑顔で見える部位でも自然で美しい仕上がりを実感しやすい素材です。
そのため、見た目の美しさを重視する方に選ばれるケースが増えています。
・プラークが付きにくく、清潔さを維持しやすい
ジルコニアの表面はつるつるしており、細菌やプラーク(歯垢)が付着しにくい特徴があり、インプラント周囲炎などの感染リスクを軽減できると考えられています。
このことから、適切なセルフケアとメンテナンスを続けることで、長期的にも歯ぐきの健康を維持しやすい素材です。
・金属を含まないため、アレルギーの心配がほとんどない
チタンは生体との親和性が高いとされていますが、体質によっては金属アレルギー反応や金属イオンの溶出が起こる可能性もあります。
一方、ジルコニアは完全な非金属素材であり、アレルギーのリスクをほぼゼロに近づけられるのが大きな特徴です。
そのため、金属アレルギーを持つ方や、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)など皮膚トラブルを抱える方にも適したインプラントといえます。
・生体とのなじみが良く、安全性が高い
ジルコニアは骨や歯ぐきとの親和性が高く、炎症を起こしにくい素材です。
医療分野では、すでに人工関節などの医療用セラミックとして長年使用されており、実績のある素材です。
口腔内でも安定しやすく、身体にやさしいインプラント素材として注目されています。
ジルコニアインプラントの注意点とリスク

・長期的な臨床データがまだ少ない
チタンインプラントは数十年にわたる豊富な臨床実績がありますが、ジルコニアインプラントは比較的新しい素材で、長期的な経過報告はまだ限られています。
今後さらにデータが増えることが期待されますが、現時点では経験豊富な歯科医師や信頼できるメーカー製品を選ぶことが大切でしょう。
・衝撃や強い力に弱い傾向がある
ジルコニアは硬度が高い一方で、チタンに比べると衝撃や咬む力による「割れ」「欠け」に対してやや弱いという特徴があります。
そのため、噛み合わせが強い方や歯ぎしり・食いしばりの癖がある方は注意が必要です。
ナイトガード(就寝時マウスピース)を使用して力を分散させることで、破損リスクを軽減することができます。
・すべての症例に適応できるわけではない
骨の量が少ない場合や噛む力が強い方、複数のインプラントを埋入するケースなどでは、チタンインプラントの方が適している場合もあります。
ジルコニアインプラントは、症例ごとにより良い素材を見極める診断力が求められます。
長く快適に使うためのメンテナンス

どの素材のインプラントにも共通していることですが、定期的なメンテナンスこそが長期安定のポイントです。
ジルコニアインプラントは汚れが付きにくい素材とはいえ、ケアを怠ると歯ぐきに炎症が起こる可能性があります。
そのため、下記のことに考慮して生活することが推奨されます。
・3〜6か月ごとに歯科医院でのクリーニングを受ける
・毎日のセルフケアでは歯ブラシに加えて、デンタルフロスやタフトブラシを併用する
・歯ぎしりや食いしばりがある方は、ナイトガード(就寝時マウスピース)で噛み合わせの負担を軽減する
これらのケアを継続することで、10年以上にわたる安定した使用も十分に期待できます。不具合が起きる前に未然に防ぐためにも、セルフケアと定期的な医院でのチェックを欠かさないことが大切です。
【まとめ】
金属を使わないメタルフリー治療としてジルコニアインプラントは注目されています。
審美性・生体親和性・アレルギーへの配慮といった面で大きな可能性を持つ一方、症例選択と長期管理の重要性も大切なため、インプラント治療を検討する際には十分に確認してから素材を選択しましょう。
もし「金属を使わないインプラントにしたい」「アレルギーが心配」と感じたら、まずはCT検査や全身状態のチェックを受け、チタンとジルコニアの両方を比較して判断することをおすすめします。
患者様の希望や体質に合わせたより良い治療法を、経験豊富な歯科医師と一緒に選びましょう。






