インプラントコラム
COLUMN
即時荷重インプラントとは?即日仮歯が入る治療の条件と失敗を防ぐコツ
25.10.31
インプラント治療と聞くと、「手術から被せ物が入るまで数か月かかる」というイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。
しかし近年では、「即時荷重インプラント(即日インプラント)」と呼ばれ治療法もあり、手術当日に仮歯を装着できるケースも増えています。
今回は、この即時荷重インプラントの特徴、適応になる条件と注意する点について解説します。
即時荷重インプラントとは?

従来のインプラント治療では、手術でインプラント体(人工歯根)を埋入したあと、3〜6か月ほどの治癒期間を経過して安定してから被せ物を装着します。
この期間に、インプラントと骨が結合するのを待つ必要があり、その間は噛む・話すといった日常生活に制限がありました。
一方、即時荷重インプラントは、インプラントを埋入したその日のうちに仮歯を装着する方法です。
見た目をすぐに回復できるだけでなく、手術当日から食事や会話のストレスを軽減できる点が大きなメリットです。
ただし、この方法はすべての方に適応できるわけではありません。
骨の密度や量、インプラントの固定力、咬み合わせのコントロールなど、複数の条件が揃っていることがポイントになります。
即時荷重インプラントのメリット

・手術当日から自然な見た目を取り戻せる
特に前歯など見た目を重視する場所は、歯が無い期間があると不安やストレスを感じやすいと思います。
即時荷重インプラントなら、埋入したその日に仮歯を装着できるため、見た目を維持したまま治療を進められるので見た目のストレスを軽減します。
・食事や会話のストレスが少ない
従来のインプラント治療では、治癒期間中に仮義歯や入れ歯を装着することがあり、違和感を覚える場合もありました。
一方、即時荷重インプラントは仮歯をしっかり固定できるため、噛む・話すといった日常生活をスムーズに行えるのが特徴です。
・通院回数を減らせ、治療期間を短縮できる場合がある
複数段階に分けていた従来の工程をまとめられるため、全体の治療期間を短くできる可能性があります。
その結果、仕事が忙しい方や遠方から通院される方にとっても、時間的な負担が少ない治療法として選ばれています。
即時荷重インプラントの適応条件
即時荷重インプラントは「即日で仮歯が入る」という治療法ですが、すべての方が対象になるわけではありません。
治療が適用されるのは、以下の条件を満たしている必要があります。
・歯ぐきや感染のリスクを適切に管理できること
手術後の感染は、インプラントトラブルの大きな原因の一つです。
清潔な口腔環境を維持し、禁煙や糖尿病の血糖コントロールなど全身的な健康管理も重要です。
全身のコンディションや歯ぐきの健康、免疫力をしっかり整えておくことで、手術後の回復がスムーズになり、インプラントの安定性も向上します。
・十分な骨量と骨質があること
インプラントをしっかり固定するには、十分な骨の厚みと密度が必要です。
CTによる三次元的な骨の診断を行い、インプラント埋入時の初期固定が十分にできるかを確認します。
骨がやわらかい、または骨吸収が進んでいる場合には、段階的に進める従来の方法が選択されます。
・噛み合わせの力をコントロールできること
仮歯を装着した直後は、まだインプラント体と骨が完全に結合していない状態です。
この時期に噛む力が一部に集中すると、インプラントの動揺や脱落を引き起こすリスクがあります。
そのため、噛み合わせを丁寧に調整し、過度な負担を避ける設計にすることが大切です。
即時荷重インプラントの適応と注意が必要な方

適応しやすい方
1本だけ歯を失った方
骨の質が良好で喫煙をしていない方
この条件の方は、咬み合わせの調整がしやすく、感染リスクも低いため成功率が高い傾向があります。
注意が必要な方
複数本の歯を失っている方
噛む力が強い方
ガイドサージェリーなどの精密なシミュレーションを併用することで、安全性を高められます。
適応が難しい症例
骨量が不足している方
歯周病が進行している方
重度の全身疾患がある場合
段階的に進めるインプラントの2回法(従来法)を選択した方が、治療の安定性が確保しやすくなります。
デジタル技術が支える即時荷重インプラントの進化

近年では、デジタルガイドシステムや3D口腔スキャナーの活用により、インプラントの埋入位置や角度を高精度にシミュレーションできるようになりました。
さらに、CAD/CAM技術を用いて、手術当日に仮歯を設計・製作することも可能となり、即時荷重インプラントの精度と成功率が大幅に向上しています。
このようなデジタル技術の進歩こそが、患者様にとって負担の少ない「精密な即日インプラント治療」を実現する大きなポイントになっています。
即時荷重インプラントのリスク
即時荷重は大きなメリットをもつ治療法ですが、安全に行うためには注意すべき点もあります。
以下のようなリスクを理解したうえで、判断することが大切です。
・装着する仮歯はあくまで一時的なものであり、最終的な被せ物が入るまでの期間は噛み合わせや清掃に注意が必要です。
・骨との結合が安定する前に強い力がかかると、インプラントが動揺する可能性があります。
・術後の腫れや痛み、感染リスクは通常のインプラント手術と同様にあります。
・技術的な難易度が高く、インプラント治療経験豊富な歯科医師の技術と的確な診断が必要です。
特に、「早く歯を入れたい」という気持ちが強い患者様ほど、安定性よりもスピードを優先してしまう傾向があります。
治療前のカウンセリングでは、長期的な安定性とリスクのバランスを十分に理解したうえで判断することが大切です。
【まとめ】
即時荷重インプラントは、見た目の回復・噛む機能・治療中の快適さを同時に叶えられる治療法です。
しかし、すべての方に適応できるわけではなく、骨の状態・全身の健康状態・噛み合わせ・生活習慣などを総合的に検討することが大切です。
「即日で歯を入れたい」という希望を叶えるためには、長期安定性を前提に、経験豊富な歯科医師が慎重に適応を見極めることが成功へのポイントとなります。
当院では数多くのインプラント治療を行っておりますので、インプラントを検討している方はお気軽にご相談ください。






