インプラント治療は、失った歯を本来のようにしっかり噛める状態へ回復する治療方法です。

しかし、ごくまれに

「インプラントが揺れる気がする」

「外れそうで不安」という症状が生じることがあります。

本来インプラントは、顎の骨としっかり結合することで高い安定性を保つ構造になっています。

そのため、ぐらつきや脱落の症状が出る場合は、何らかの原因がある可能性が考えられます。

そこで今回は、インプラントが不安定になる代表的な要因と、トラブルを未然に防ぐために患者様自身が取り組めるポイントを解説していきます。

インプラントが不安定になる主な原因は3つ

• インプラント体が骨としっかり結合していない

インプラント治療で大切なのは、人工歯根となるインプラント体が顎の骨と強固に結びつく オッセオインテグレーションがしっかり確立されることです。

しかし、以下のような条件によって、この結合がうまく進まないケースがあります。

・骨量が少ない、または骨質が柔らかい

・インプラント手術後に強く噛みしめてしまう(強い力が加わる)

・糖尿病などによる治癒の遅延

・感染や炎症が起きている

しっかり安定する前に負荷がかかってしまうと、インプラント体が安定せず、ぐらつきの原因になります。

• インプラント周囲炎（インプラント周囲の炎症・骨吸収）

天然歯に歯周病が起こるように、インプラントの周囲にも細菌が入り込み炎症が起きることがあります。

これがインプラント周囲炎です。

炎症が進むと周囲の骨が溶けてしまい、インプラントを支える力が弱まります。

また、天然歯と比較して、インプラントには衝撃を緩和する「歯根膜」がないため、インンプラント周囲炎になると、進行が早い特徴があります。

インプラント周囲炎が起こりやすい理由としては、

・歯磨きが不十分で汚れが残っている

・定期メンテナンスを受けていない

・歯垢や歯石の蓄積

・噛み合わせのトラブル

・喫煙習慣

・糖尿病などの持病

などが考えられます。

自覚症状が少なく、軽度のうちは症状がほとんどないため、気づいたときには骨吸収がかなり進行していることも少なくありません。

• 被せ物（人工歯）やスクリューのトラブル

顎の骨に埋まっているインプラント体に問題がなくても、上に装着する被せ物や土台部分に不具合が生じて揺れているように感じる場合があります。

例としては、

・土台のねじの緩み

・被せ物の破折・欠け

・噛み合わせのズレ

・噛みしめ・食いしばりによる負荷

などがあります。

これらは再固定や再調整で改善できることが多く、比較的対処しやすいトラブルです。

ぐらつきを放置するとどうなる？

インプラントがしっかり固定されていない状態をそのままにしておくと、次のようなトラブルにつながる可能性があります。

炎症が広がり、さらに骨が失われる

ぐらつきがある部分には細菌が入り込みやすく、炎症が周囲の組織へ広がっていきます。そうすると、顎の骨が溶けてしまい、インプラントを支える土台が弱くなります。

他のインプラントや天然歯にも悪影響

炎症や噛み合わせの乱れが広がることで、隣接するインプラントや残っている歯に負担がかかり、トラブルが連鎖することもあります。

噛み合わせのバランスが崩れる

ぐらつきによる微妙な位置のズレは、噛む力のバランスが悪くなってしまい、顎関節や周囲の歯にストレスをかけてしまいます。

インプラントが脱落してしまう可能性

骨との結合が保てない状態が続くと、最終的にはインプラントが抜け落ちる可能性もあります。

一度脱落すると、その部分への再埋入が難しくなるケースもあります。

このような悪化を防ぐためには、早めに異変に気づき、早期に対応することが何より大切です。

ぐらつき・脱落を防ぐために今日からできる対策

インプラントを長期間安定させるためには、治療後のセルフケアと生活習慣が重要です。日常のちょっとした心がけで、周囲炎や脱落のリスクを減らすことができます。

ここでは、今日から実践できる予防策を解説します。

毎日のセルフケアを徹底する

インプラント周囲炎の最大の原因は、歯周病と同じくプラークの付着です。

天然歯以上に汚れが残りやすいため、日々の歯磨きが寿命を左右します。

歯ブラシで丁寧に磨く

インプラント周囲の歯ぐきの境目に沿って、細かく振動させるように磨くのが効果的です。

歯間ブラシやデンタルフロスを併用する

インプラント周囲は歯間が広くなりやすいため、歯間ブラシが効果的です。

サイズ選びに迷ったら、太さは歯科医院に相談して選びましょう。

インプラントの部分は角度を変えて磨く

真横からだけでなく、斜め上・斜め下など複数方向からブラシを当てて、プラークを落とします。

「毎日の磨き方」がインプラントの寿命に影響するため、清潔な口腔内の環境を維持しましょう。

定期的なメンテナンスを必ず受ける

治療が終わった後こそ、定期的なチェックが必要です。

3〜6ヶ月ごとの定期検診はインプラント治療を長持ちさせるために大切です。

・インプラント体の安定性チェック

・噛み合わせ（咬合）のチェック

・周囲骨や歯ぐきの状態確認

・歯石・バイオフィルムの除去

定期メンテナンスを怠ると、インプラント周囲炎の発見が遅れてしまい、脱落リスクが高まる場合があります。

噛みしめ・食いしばりの癖に注意する

インプラントは天然歯のような歯根膜がないため、強い力が直接骨に伝わりやすい特徴があります。

そのため、知らないうちにかかる過剰な咬合力がぐらつきの大きな原因になることがあります。

・ナイトガード（マウスピース）の使用

・起床時の顎の疲労感をチェック

・ストレスが強い時は要注意

特に前歯部のインプラントは力が集中しやすいため、過度な力は管理が必要です。

喫煙を控える

喫煙はインプラント治療のリスクファクターです。

ニコチンやタールは血流を悪化させ、治癒不良・周囲炎・骨吸収のリスクを著しく高めます。

・傷口の治りが遅くなる

・骨との結合が弱まりやすい

・メンテナンスしていても周囲炎が進行しやすい

インプラントを長期間安定させたい場合、禁煙が大切なポイントです。

【まとめ】

インプラントがぐらついたり不安定になったりする主な要因は、骨との結合が不十分な状態・インプラント周囲炎・スクリューや上部構造の不具合の3つに要因が関係しています。

しかし、これらの多くは毎日の丁寧なセルフケア、定期メンテナンスの継続、生活習慣の改善によって予防することが可能です。

インプラントは適切なケアを続けることで、長期にわたり安定して快適に使用できる治療法 です。

インプラントをご希望の方はお気軽にご相談ください。

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