インプラントコラム
COLUMN
インプラントと認知症予防とは?噛む力が脳に与える影響
26.02.25
「歯を失うと認知症のリスクが高くなるの?」
このような疑問を耳にする機会が増えてきました。
近年では、歯の残存本数や咀嚼力と認知機能との関連性を示す研究も報告されており、口腔の状態と脳の健康は切り離せない関係にあると考えられています。
そこで今回は、インプラント治療と認知症予防の可能性について、特に「噛む力」(咀嚼機能)に着目しながら、解説していきます。
なぜ「噛むこと」が脳に関係するのか?

咀嚼は脳を活性化させる刺激になると考えられています。
私たちが食事で食べ物を噛むと、歯根膜やあごの筋肉にある部分から、多くの神経信号が脳へ送られます。
これらの刺激は、記憶を担う「海馬」や思考・判断に関わる前頭葉の働きを高めると考えられています。
一方で、噛む回数や噛む力が低下すると、脳に届く刺激も少なくなります。
そうすると、脳の活動量が低下する可能性も指摘されています。
つまり、しっかり噛める状態を保つことが、脳の活性を維持する助けになる可能性があるのです。
歯の本数と認知症リスクの関連性

いくつかの研究では、入れ歯などで噛む機能を補っている人は、リスクが比較的低いと考えられており、残っている歯の本数が少ない人ほど、認知症の発症率が高い傾向にあるといった結果が報告されています。
もちろん、歯の本数だけが認知症を引き起こすわけではありません。
しかし、十分に噛めない状態が長く続くことで、脳への刺激が減少し、それが認知機能に影響を及ぼす可能性があると考えられています。
インプラントで「噛む力」はどの程度まで回復できる?
インプラント治療は、顎の骨に人工の歯根を埋め込み、その上に人工歯を装着する方法です。
骨としっかり結合するため、天然歯に近い安定感を得られるのが大きな特徴です。
その結果、食事の際にも力を入れて噛むことができ、咀嚼機能の回復が期待できます。
【入れ歯との主な違い】
| 比較項目 | インプラント | 入れ歯 |
| 噛む力 | 天然歯に近いレベルまで回復 | やや弱くなりやすい |
| 安定性 | 骨に固定されるため安定 | 外れたり動いたりしやすい |
| 顎骨への刺激 | 噛む力が骨に直接伝わる | 刺激が伝わりにくい |
特に注目すべきなのは、噛んだときの力が顎の骨に直接伝わる点です。
適度な刺激が加わることで骨量の維持に役立つ可能性があり、このことは口腔内だけでなく、全身の健康維持にも関係すると考えられています。
咀嚼力と全身の健康との関係

噛む力が弱くなると、日常生活にもさまざまな影響が出やすくなります。
・フレイル(虚弱)状態へ進行しやすい
・摂取できる栄養素が偏りやすくなる
・体力や筋力の低下を招きやすい
・やわらかい食品ばかりを選ぶようになる
栄養バランスの乱れは、認知機能の低下とも関連があるといわれています。
そのため、しっかり噛める状態を保つことは、適切な栄養摂取にも関係して、結果として認知症予防にもつながる可能性があると考えられています。
ただし「インプラントが認知症を防ぐ」とは限らない
知っていただきたいのは、インプラント治療を受ければ認知症を直接的に防げる、という明確な医学的証拠は現時点では確立されていないという点です。
しかしながら、咀嚼機能の回復・生活の質(QOL)の改善・人との会話や外出機会の増加
咀嚼機能の回復といった変化が積み重なることで、結果として脳の働きを保つことに良い影響を与える可能性は十分に考えられます。
つまり、インプラント治療は「直接的な予防法」というよりも、健康的な生活を支える要素のひとつになり得るといえるでしょう。
シニアこそ「しっかり噛める」を守ることが大切

年齢を重ねるにつれて、歯周病が進みやすくなることや入れ歯が合わなくなる、抜歯が必要になるケースが増えるなどの口腔内のトラブルが起きやすくなります。
歯を失った状態をそのままにしておくと、噛む力は少しずつ衰えていきます。
その結果、咀嚼機能の低下につながる可能性があります。
だからこそ、できるだけ早い段階での適切な治療・継続的なメンテナンスで噛み合わせの定期的なチェックがとても大切です。
「しっかり噛めること」を維持する意識が、将来の健康を支える土台になります。
インプラント治療を検討する際に押さえておきたいポイント
インプラントを「認知症予防につながるかどうか」という視点だけで判断するのではなく、より広い観点から総合的に検討することが大切です。
特に次の点をしっかり確認しましょう。
全身疾患の有無
糖尿病や骨粗しょう症、心疾患などがある場合は、治療計画に影響することがあります。服薬状況も含めて的確に伝えることが重要です。
骨量・骨質の評価
顎の骨の高さや厚み、密度はインプラントの安定性に影響します。
そのため、平面のレントゲン撮影だけでなく、立体的な骨の状態を調べられるCTなどによる精密な検査が重要です。
その情報を元に骨量や骨質を診断して、インプラントの治療計画を立案します。
生活習慣の見直し
喫煙や不規則な生活習慣は、治癒や長期安定に影響する可能性があります。
治療前後の生活管理も重要なポイントです。
メンテナンスを継続できるか
インプラントをより良い状態で維持するためには、定期的なメンテナンスが重要です。
そのため、定期的な通院が可能な環境かどうかも考慮する必要があります。
インプラント治療は、装着して終わるものではありません。
長期的な管理と継続的なケアを前提とした治療であることを理解したうえで検討することが大切です。
【まとめ】
インプラント治療と認知症予防の関係については、現在もさまざまな研究が進められている段階です。
ただし、噛むという行為が脳へ刺激を与え、栄養状態や生活の質(QOL)に影響することは、徐々に明らかになってきています。
歯を失った状態をそのままにせず、噛める機能を回復し、それを維持していくことは、将来の健康を見据えた前向きな選択といえるでしょう。
「歯を失ってから特に治療をしていない……。」
「入れ歯が合わず、十分に噛めていない気がする……。」
そのようなお悩みがある場合は、一度歯科医院で相談してみることをおすすめします。
インプラントだけでなく、複数の治療方法を知ることで、自分に合った選択肢が見えてきます。
噛む力を守ることは、口元だけでなく、脳と体の健康を支える大切なポイントです。






