基礎知識

安心して治療を受けるために、インプラント手術の流れを把握しておきましょう

19.05.16

インプラント治療は、虫歯治療や抜歯などと異なり、外科手術を必要とします。外科手術と聞くと不安に感じるかもしれませんが、手術の流れを把握しておくことで、不安を払拭し、安心して治療を受けることができると思います。ではインプラント手術はどのような流れで行われるのでしょうか。

手術前に行われることについて

インプラントは、抜歯のようにいきなり手術をするわけではありません。治療を受けるためには、事前にカウンセリングや色々な検査が行われます。まずは、手術までに行われることについてご説明いたします。

カウンセリング

治療を行う前に、まずカウンセリングが行われます。カウンセリングの目的は、インプラント治療がどのようなものであるのかの説明および、患者さんの不安や疑問の声をしっかりと聞くことです。
またインプラント治療に最も大切なことは、信頼関係を築くことでもあります。
事前カウンセリングを通じて、患者さんと歯科医師、スタッフと信頼関係を築くことが、治療の成功のカギと言ってもよいでしょう。

各種検査

インプラント治療が決定したら、各種検査を行います。歯周病の有無などお口の中の状態の確認、レントゲンおよびCT撮影、サージカルガイドの作製など、治療を円滑に進めるための検査を行います。

歯周病の治療

もし歯周病があった場合、インプラント手術までに歯石除去やクリーニングを行い、お口の中の状態を安定させるために歯周病の治療を済ませておきます。歯周病をそのまま放置して治療を進めると、インプラント周囲炎を引き起こしかねません。インプラント周囲炎を避けるためにも、術前にしっかりと歯周病の治療を行って、よい状態で手術に臨めるようにしておきます。

手術の術式について

インプラント失敗の症例

インプラント手術は、一回法と二回法という術式があります。どちらの術式で行われるかは、患者さんのお口の中の状態によって決められます。
一回法とは、外科手術を一度だけ行う術式です。インプラント体を埋め込んだあと、インプラントの先端部分を歯ぐきから露出させたままにしておきます。
一回法は外科手術がいちどで済むというメリットがありますが、一回法は適用に限りがあります。また細菌感染の可能性があるため、歯周病を患っている方には一回法は不向きです。

いっぽう二回法は、外科手術を二回行う術式です。インプラント体を顎の骨に埋め込んだあと、インプラントの先端を露出させずに歯ぐきを縫合します。その後インプラント体と顎の骨の結合を確認ののち、再び麻酔を行って歯ぐきを切開し、インプラントの先端を露出させてアバットメントを取り付けます。
二回法はほとんどの症例で適応されますが、外科手術を二度行う手間が必要です。また骨造成や骨移植などが必要な場合は、ほとんど二回法で行われます。

インプラント手術の流れ

では次に、インプラント手術はどのように行われるのか、その流れについて説明します。

麻酔の注射を打ち、歯ぐきを切開する

まず麻酔の注射を行います。基本的には局所麻酔ですが、場合によっては静脈に直接麻酔液を入れる「静脈内鎮静法」を行うことがあります。オールオン4や、高血圧など持病がある方などは、安全を考慮して静脈内鎮静法で手術を進めることがあります。
手術そのものは麻酔が効いているので、手術の痛みを感じることはありません。

顎の骨にインプラント体を埋め込む

術前に作製したサージカルガイドを使用しながら顎の骨に穴を開け、インプラントを正確な位置に埋め込みます。歯ぐきを切開しないフラップレス手術は、出血量も少なくて済みます。
痛み止めが処方されますので、麻酔の効果が切れる前に痛み止めを飲んでおくとよいでしょう。

顎の骨とインプラント体の結合を待つ安静期間に入る

インプラント体を顎の骨に埋入したあとは、インプラント体と顎の骨が結合するための安静期間に入ります。
安静期間は部位や本数、顎の骨の状態などにもよりますが、一般的には上顎で6ヶ月、下顎で約3ヶ月程度の安静期間が必要となります。

安静期間後、二次手術を行う

二回法の場合、インプラント体と顎の骨の結合が確認できたら、再び歯ぐきに麻酔をして切開し、インプラントの先端を露出させてアバットメントを取り付ける二次手術を行います。アバットメントとは、インプラント体と人工歯を繋ぐ連結部品のようなものです。二次手術は一次手術と比べるととても軽く、時間も短くて済みます。
なお一回法ではこの工程が省かれ、人工歯の型取りが行われます。

人工歯の型取りおよび装着

二回法では、アバットメントの取り付け後に人工歯の型取りを行います。人工歯の素材は様々ですが、審美面が重視されるインプラントでは、人工歯の素材としてセラミッククラウンやジルコニアセラミッククラウンなどが選ばれることが多いようです。
人工歯の仕上がりは技工所によって異なりますが。ほとんどの場合型取り後1~2週間で出来上がります。
人工歯を装着し、噛み合わせを調整して問題がなければ治療はこれで終了です。

インプラント手術後に気をつけるべきこととは

手術を終えてホッと一安心されると思いますが、いくつか注意すべきことがあります。

飲酒、長風呂、激しい運動は控える

インプラント手術は多少なりとも出血を伴います。手術後に飲酒や長いお風呂、ハードな運動を行うと血行がよくなり、手術した部位から出血することがあります。手術を終えた日は安静に過ごすように心がけてください。

うがいを控える

血が滲むからといって、何度もうがいをするとかえって傷口の直りを遅くさせてしまいます。うがいは歯磨きのときだけで十分です。

喫煙を控える

タバコを吸うと血管が収縮し、血行が悪くなります。そのためインプラント体と顎の骨の結合や、歯ぐきの治りに影響が出てしまうことがあります。喫煙習慣はインプラント治療だけでなく、お口の健康に悪影響を与えてしまうため、インプラント治療を行うことに決定したら、きっぱりと禁煙したいものです。

インプラント手術後の食事について

インプラント手術を終えた日から軽い食事は可能です。インプラントの部分にあまり負担がかからないよう、反対側の歯で噛むようにしてください。食事内容は、できるだけ柔らかいものがおすすめです。
インプラント手術の流れと、注意点などについてお話をいたしました。インプラント手術を安心して受けていただくためには、歯科医院選びも大切です。よく調べ、インプラント治療を得意としている歯科医院を選ぶようにして下さい。