基礎知識

重度の歯周病は歯を残す?重度の歯周病で歯を残した時に起きること

23.03.30

「できるだけ歯を残す」ことを希望している方も多く、私たちもご自身の歯で噛める環境を維持できるようにサポートさせていただいています。

ただ、かなり進行した歯周病の重度の方の場合、治療をしてしっかり噛めるような状態まで安定させるのが難しいこともあります。

そこで今回は重度の歯周病で歯を残した時に起きることについて詳しくご紹介します。

 

【歯周病の進行度】

ひとくちに歯周病といっても進行度によって症状が大きく変わります。

歯周病の半数の方は軽度~中度の方なので治療をして、正しいセルフケアを行っていただければ、安定して食事ができるようになります

ただし、重度の歯周病の場合には、治療をして改善が見込めない時には、最悪の場合抜歯の可能性もあります。

それでは、歯周病の進行度についてお話します。

 

軽度

歯周病の初期の段階で歯ぐきに炎症が起きていて「歯肉炎」といい、自覚症状はほとんどなく、歯磨きをした時に出血する、歯ぐきが赤くなっているなどの症状があります。

歯ぐきの深さの歯周ポケットは2~3ミリでこの段階で治療をすると健康な歯ぐきへの回復が期待できます。

 

中度

歯肉炎から進行して歯ぐきの周りの組織にも炎症がある「歯周炎」の状態です。

炎症が広がり、歯周ポケットは3~5ミリとさらに深くなります。

 

歯ぐきの炎症が進み、出血が多くなってきます。歯を支えている骨が少しずつ溶かされ始め、歯のぐらつきを感じる場合もあります。

進行を抑えるためには、細菌感染しているプラークや歯石を除去して歯ぐきが安定するように治療をします。

 

重度

歯ぐきの炎症が強く、歯を支えている顎の骨もかなり減った状態で、かなり悪化しています。

歯周ポケットも6ミリ以上になり、歯がグラグラして噛むと痛みが出ることも多いです。

中度と同様に歯周ポケットの中のプラークや歯石除去しますが、歯周ポケットが深いので、それだけでも除去できない場合には歯ぐきを切開して歯石を除去する「フラップ手術」という外科手術を行う場合もあります。

 

また、顎の骨がかなり減っている場合には、歯ぐきの周りの組織を回復させる「再生療法」を検討します。

ただ、再生療法でも完全に元に戻すのは難しいので、ここまで進行しないように予防していくことが大切です。

 

【重度の歯周病が1本の場合】

重度の歯周病になると歯の周りの組織に炎症が広がります。

そうすると、隣の歯にも炎症が広がり、顎の骨が減ってしまうことも。

 

重度の歯周病になると顎の骨がほとんどなくなり、根の先は顎の骨があっても歯ぐきのみでついている状態が多くなります。

そうすると、歯はグラグラして炎症もあるので、しっかり噛めず、食事がしにくい状態になってしまいます。

 

【重度の歯周病が複数本の場合】

 

歯周病が1本だけでも、治療せずに放置してしまうと、周りの組織の炎症が広がり、健康だった歯にも歯周病は広がります。

そうすると、適切な処置がされなかったため、多くの歯がグラグラ揺れるようになってしまうことも。

 

重度の歯周病は周りの組織にも炎症を拡大し、顎の骨を溶かしていきます。

入れ歯やインプラントは顎の骨の幅や厚みが必要なため、そのままでは治療が難しいものになります。

 

【重度の歯周病を残すと起きること】

重度の歯周病で歯石除去や歯ぐきを切開するフラップ手術などを行っても改善が見込めない場合には、どのような治療計画にするか検討します。

できるだけ歯を残したいという思いはありますが、歯を残したことで食事の際に痛みが出たり、しっかり噛めなかったりすると日常生活の中で負担になってしまいます。

 

そして、歯周病菌は血液を通してさまざまな臓器で悪影響を起こすこともあります。

糖尿病の悪化や動脈硬化を促進して脳梗塞や心臓疾患などにつながる場合もあり、歯周病菌を減らす必要があります。

 

また、歯周病が広がることもありますので、顎の骨が吸収される可能性が高いため、将来、入れ歯やインプラント治療を行いたい時に治療が困難になることも。

その場合には、患者さまと相談の上、残すのが難しい場合には、抜歯という判断になることもあります。

 

【抜歯が必要になった時の治療法】

 

抜歯が必要になった際に3つの治療法をご紹介します。

インプラント

歯を失った部分にインプラント体を埋め込んで、歯の根の代わりにして、その上に被せ物をする治療です。

インプラントの大きなメリットは、天然歯と同じような噛み心地で噛むことができるようになるところです。

ほかの歯に負担をかけることなく単独で治療が可能です。

また、被せ物にはセラミックの歯を選択できるので、透明感があり、見た目も自然な被せ物です。金属を一切使用しないので金属アレルギーの心配もなく、歯ぐきが黒ずむ心配もありません。

ただ、ほとんどの場合、保険は適応にならないので費用が高くなることがあり、外科手術も必要です。

 

ブリッジ

ブリッジとは両隣の歯を支えにして橋渡しのようにし、失った部分を補う治療法です。

ただし、ブリッジの場合には、支える歯が健康なことが条件になります。

保険の中で治療が可能ですが、奥歯の場合、銀歯になるので、見た目が気になることも。

また、両隣の歯で支えるので、両隣の歯を削る必要があるので、削った歯の寿命を縮めてしまう可能性があります。

 

入れ歯

部分入れ歯はほかの歯にばねをかけて支えにして使用する治療法です。

取り外し式なので、安定感に欠ける点があり、ずれたり、噛みにくかったりする場合があります。

また歯ぐきと入れ歯の間に食べ物が挟まることや、就寝時には外す必要も。

保険の中で治療が可能で費用を抑えて治療はできますが、慣れるまで時間がかかるケースも少なくありません。

 

【まとめ】

できるだけ歯を残すために、さまざまな方法を検討して治療をしています。

ただ、重度の歯周病まで進行してしまうと、治療をしても歯を残すことが難しく、最悪の場合、抜歯が必要なケースも考えられます。

その前に定期的に検診を受けて歯周病を治療したり、予防したりしていくことが大切です。

当院では歯周病の治療にも力を入れていますので、歯や歯ぐきのお悩みがありましたらぜひ1度ご相談ください。