基礎知識

インプラント周囲炎とは?治療と予防について

18.07.25

歯周病とインプラント周囲炎の関係

インプラントにも歯周病と同じような病気があるのは知っていますか?
歯周病と同じようにインプラント周囲炎も、一度罹患してしまうと、完全に治るのは難しいといわれている病気です。
歯を失った治療法として、半永久的に使えるとされているインプラント治療ですが、天然の歯と同じように定期的な検診や適切なケアが必要です。

インプラント歯周炎と歯周病の関係

歯周病とは?

歯周病とは口腔内の細菌によって、歯茎や顎の骨に炎症が起こり、そのまま進行してしまうと、歯茎の腫れや出血、歯の動揺などにつながる病気です。

歯周病の説明

歯周病が起こる原因

歯や歯と歯茎の間に溜まった歯垢に細菌が住み着くことが原因で歯周病になります。
丁寧に歯磨きをしていても磨けているのは70%ほど、といわれており磨き残しが原因で歯垢が溜まっていってしまうのです。

歯周病の症状

歯周病には自覚症状があまりなく、歯の出血や動揺などの異変に気が付いた時には、多くの場合かなり進行しています。歯周病菌によって歯を支える歯茎や顎の骨に炎症が起こり、歯周ポケットが深くなって、歯の動揺が起こります。
歯周病は早期発見が難しいので、虫歯に次いで歯を失う原因となっています。

インプラント周囲炎とは?

歯周病と同じように、インプラントを埋め入れたあとに歯磨きや検診が不十分な状態が続くと、細菌がインプラントと歯茎の間に侵入し炎症がおこる感染症です。
原因や症状も歯周病とよく似ており、自覚症状があまりなく、気が付いたときには進行がすすんでいる場合が多いです。
歯周病で天然の歯が抜け落ちてしまうように、せっかく手術をして埋め入れたインプラントが抜け落ちてしまうことにつながりかねません。

インプラント歯周炎の説明

インプラント周囲炎になる原因

・定期検診に通っていない方
・歯磨きしていない/磨き残しがある方
・もとから歯周病リスクの高い方
・周りの歯が歯周病にかかっている方

治療後には歯科医院への定期的な検診に行くことが必要です。大体半年に1回ほどのペースで通院し、インプラントの具合や調整をしたり、歯茎や周りの歯との噛み合わせを診察します。
合わせて家での磨き残しがないような歯磨きが必要で、歯ブラシだけではなくデンタルフロスや歯間ブラシなど清掃補助用具を使い分けながら、歯垢が残らないようにすることも大切です。
また、口腔内に歯周病菌が多くいる状態ですと、磨き残された歯垢に細菌が住み着きやすくなってしまいます。
治療をする前に歯周病にかかっている場合は、治療を優先するのが良いでしょう。

インプラント周囲炎の治療法

歯周病と異なり、インプラント周囲炎は完治が難しいといわれている病気で、完全に治癒する治療方法は見つかっていません。インプラント周囲炎に感染して、顎の骨の組織が破壊されている場合には、治療や正しいケアを続けても半永久的に維持できる確率は半分ほど、といわれています。
長期的に継続する治療となり、治療方法はインプラント周囲炎の進行状況によって、異なってきます。

治療法について

初期段階 歯周ポケット~3㎜<

インプラントの周りに歯垢が溜まり、歯周ポケットができている状態です。
インプラント周囲炎にはまだなっておらず、インプラント周囲歯肉炎の状態で、歯茎の腫れや出血が起こっています。
歯科医師の診断と歯科衛生士のケアで、インプラントの周りや歯についた歯垢を取り除き、歯磨きで磨き残しやすい箇所や、デンタルフロスや歯間ブラシの使い方を指導されます。

中期段階 歯周ポケット4~5㎜

歯周病ポケットがさらに深くなり、膿が出始めます。
口臭もするようになり、歯茎も赤くブヨブヨと腫れてきます。
初期症状のケアを継続しながら、インプラント周囲炎になっている箇所に抗生物質を使用したり、歯周ポケットの清掃をします。
インプラント周囲炎の進行状況を確認するためにも、通院回数が増えます。

後期段階 歯周ポケット5㎜~

歯周ポケットが5㎜以上あり、インプラントの動揺や露出が始まっている状態です。レントゲンでみると骨吸収が始まっており、骨がなくなってインプラントを支える状況にない場合もあります。服薬が必要となってきます。

外科手術が必要な症状の場合

インプラント周囲炎の進行が重度の場合、外科的に感染部位を取り除く場合があります。顎の骨の吸収が進んでいる場合には、骨の再生手術を取り入れて、インプラントをより長く使用できるようにします。
また、インプラントを温存できないと判断した場合は、取り除く手術を行います。

インプラント周囲炎にならないための予防方法

天然の歯よりもインプラントの方が炎症に対する抵抗力が弱いため、インプラント周囲炎は一度感染してしまうと顎の骨が吸収される速度がとても速い病気です。
自覚症状もあまりないので、毎日のメンテナンスがとても大切になってきます。
確実にインプラント周囲炎を予防するためにも、歯科医院での定期検診と、自宅での正しいケアをしましょう。

インプラント歯周炎を予防するためには

定期検診ですること

・歯周病と同じように歯周ポケットの有無、深さを測る
・レントゲン撮影による顎の骨吸収の有無
・噛み合わせのチェック
・インプラント体の揺れ、ネジのゆるみ、被せ物のチェック
・歯科衛生士によるPMTC
・磨き残しなどをチェックして、歯磨き指導

インプラント周囲炎になっていないかチェックしてみよう

・定期検診に通っていない
・デンタルフロスや歯間ブラシを使っていない
・歯磨きをすると血がでる
・インプラントがぐらついている
・歯周病だと診断されたことがある
・歯ぎしりをする癖がある
・糖尿病である
・喫煙習慣がある
・貧血である

上の項目に当てはまる方は、歯科医院に行ってインプラント周囲炎になっていないか、診察してもらった方がよいでしょう。
インプラント周囲炎は口腔内のメンテナンス不足によって引き起こされますが、全身疾患や生活習慣にも関係がある病気です。
糖尿病の場合は、インプラント治療をした際にインプラントと骨の結合がしっかり行われなかった場合にインプラント周囲炎になりやすくなります。
また、喫煙や貧血などで酸素がいきわたらなくなると手術後に感染症を起こしやすくなり、インプラント周囲炎になりやすくなる場合もあります。