基礎知識

インプラントを長持ちさせるために、定期健診を必ず受けましょう

19.05.08

インプラントを快適に使うためには、定期検診が欠かせません。定期健診を受けることは、インプラントに関する様々なトラブルを回避するだけでなく、他の歯の健康を守ることになります。今回は、インプラント後の定期健診の重要性についてお話をしたいと思います。

治療後に起こりやすいトラブルとは

インプラントは虫歯になることはありません。しかし治療後にはインプラント周囲炎など、重篤なトラブルが起こる可能性があります。

インプラント周囲炎

治療を行う前に、まずカウンセリングが行われます。カウンセリングの目的は、インプラント治療がどのようなものであるのかの説明および、患者さんの不安や疑問の声をしっかりと聞くことです。
また治療に最も大切なことは、信頼関係を築くことでもあります。
事前カウンセリングを通じて、患者さんと歯科医師、スタッフと信頼関係を築くことが、治療の成功のカギと言ってもよいでしょう。治療後の代表的なトラブルは、インプラント周囲炎です。インプラント周囲炎とは、歯周病に似た症状で、歯ぐきの腫れや出血を伴います。悪化すると膿が出る、歯槽骨の吸収が始まるなどの症状が起こり、インプラントがグラグラと揺れ始めて最終的に抜け落ちてしまうことがあります。
主な原因は、インプラントの周囲に付着したプラークです。口腔内の衛生状態が悪いと、食べかすに細菌が寄り付いてプラークを作り出します。プラークは細菌の塊で、歯のトラブルの元凶とも言えます。そのプラークへ歯周病菌が棲みついて毒素を出すことにより、歯ぐきをはじめとした歯周組織に炎症が起こります。
いちど抜け落ちたインプラントの再治療は難しく、必ずしも再治療が成功することとは限りません。というのも、抜け落ちた理由は、歯槽骨が吸収されてインプラントを支える骨が少なくなってしまったからです。適切な治療により、再びインプラントを埋入することは不可能ではありませんが、骨の吸収の度合いによっては、再治療を断念しなくてはならないでしょう。

上部構造(人工歯)が欠ける

上部構造は人工の歯のため虫歯になることはありません。しかし噛み合わせが適切でない場合や歯ぎしり、食いしばりなど歯に大きく負担がかかる癖をお持ちの方は、上部構造が欠けてしまうことがあります。適切な咬合調整および悪癖の改善が必要です。

インプラント治療後の定期健診の必要性とは

インプラント周囲炎を防ぐため

治療後は、お口の中の衛生状態が非常に重要なポイントとなります。お口の中の状態が不衛生になると、インプラント周囲炎を引き起こすリスクが高まってしまいます。ご家庭でのセルフケアはもちろん基本ですが、ご自身で汚れを完璧に落とすことは難しく、どうしても汚れが残ってしまいがちになります。ご自身では磨けたつもりであっても、粘りけのあるプラークや石灰化した歯石は歯科医院で専用の器具を使って、プロによるクリーニングで取り除く必要があります。
治療後に起こる最も多いトラブル、インプラント周囲炎を防ぐためには、プロの手によるメンテナンスを受けることが最善策と言えるでしょう。
そして、定期健診は他の歯の健康維持のためにも必要です。少しでも歯の寿命を長く保つためにも、定期健診は欠かせないのです。

噛み合わせに問題はないかどうかを確認するため

噛み合わせは少しずつ変化していきます。噛みあわせのバランスが悪いと、インプラント部分に負担がかかり、人工歯が欠けてしまう恐れがあります。それだけでなく、インプラント体と人工歯を繋ぐアバットメント部分が緩み、人工歯が外れるなどのトラブルを招く恐れがあります。
そして噛み合わせのバランスが悪くなることは、治療を行った部分だけでなく、残存歯にも負担がかかってしまいます。他の健康な歯の根が折れてしまうと、抜歯せざるをえなくなってしまいます。これでは他の健康な歯の健康を損ねてしまうため、定期健診で噛み合わせが適切かどうかの確認は、とても重要なことなのです。

インプラントに不具合はないかどうかをチェックするため

インプラントは天然歯に近い感覚で噛むことができるため、ご自身の歯のようにしっかり噛んで食事を楽しんでいただけることが大きな特徴です。これは、インプラントが適切な位置に埋め込まれており、顎の骨とインプラント体がしっかりと結合しているためです。
ところがいざ食事を行ったとき、なんとなく違和感や痛みなどがある場合、インプラントが正常に機能していないと考えられます。またアバットメントが緩んでしまうと、人工歯が取れてしまうことがあります。このように、定期健診で不具合がないかどうかもチェックします。

定期健診で行われる内容とは

歯科医院により若干の違いはありますが、インプラント治療後の定期健診では、次のようなことが行われます。

口腔内のチェック

インプラント部分および他の歯に問題はないかどうかチェックします。また歯だけでなく、舌や歯ぐきなどの粘膜に異常はないかどうか、お口全体のチェックをします。

歯科衛生士によるクリーニング

定期健診のメインといってもよい、歯のクリーニングはインプラントを長持ちさせるために不可欠です。インプラント周囲や他の残存歯にプラークや歯石が付いていると、インプラント周囲炎や歯周病を引き起こしてしまいます。セルフケアに加えて、歯科医院でプロによるメンテナンスを受け、お口の中を清潔に保つよう導きます。

ブラッシング指導

毎日のセルフケアは歯や歯ぐきの健康維持の基本です。しかしご自分ではきちんと磨いているつもりでも、実際は磨けていないことがほとんどです。歯ブラシの毛先が正しく当たっているかどうかなど、正しい磨き方やデンタルフロス、歯間ブラシの使い方などの指導を受けます。

噛み合わせの調整

噛み合わせに不具合があると、他の歯に悪影響を与えてしまいます。また少しずつ変化する噛み合わせを入念にチェックし、インプラントや他の残存歯に負担がかからないよう定期健診では噛み合わせを修正します。

定期健診は必ず受けましょう

インプラントを長持ちさせるためには、定期健診が欠かせません。定期健診を受けることでインプラント周囲炎などのトラブルの早期発見および早期治療が可能となります。「特に問題なく使えているから」とそのままにしておくと、インプラント周囲炎などのトラブルを招く恐れがあります。
永く快適にインプラントを使うため、そしてお口の健康維持のためにも、定期健診は必ず受診するように心がけましょう。