基礎知識

骨拡大治療を受ければインプラント治療が可能になるって本当?

19.11.15

「骨の厚さが足りないためインプラント治療を受けられない」このような理由から、インプラント治療を断念した患者さまも少なくありません。しかし近年では、骨拡大治療として知られる「歯槽提拡大手術」や「歯槽提分割術」を行うことで、従来の医療技術ではインプラント治療を受けることができなかった人も、インプラント治療を受けられる可能性があります。そこで今回は骨拡大治療である、歯槽提拡大手術やインプラント手術を可能とさせるその他の治療法についても、詳しくご紹介して参りましょう。

歯槽骨は吸収される?

顎の骨である歯槽骨は、歯を支える役割という重大な役割を持つ骨であります。しかし、歯槽骨は歯から伝わる刺激を受けなくなると吸収され痩せてしまう特性をもっているため、歯を抜けたまま治療を行わずに放置してしまうと、歯から伝わる刺激を受けられなくなる歯槽骨は、吸収され痩せていきます。

また、歯周病も歯槽骨の吸収を促進させる要因として挙げられ、歯周病菌は歯槽骨だけではなく歯を支える歯周組織と呼ばれる、歯肉、歯根膜、セメント質まで蝕んでいき溶かすために、重度の歯周病の患者さまの多くは歯槽骨が吸収されている状況下にあります。

上記でご紹介したようなケースである場合には、いざインプラント治療を受けたいとお考えになっても検査の結果、歯槽骨の厚さや高さが足りないと診断され、インプラント治療を受けることが困難でありました。

インプラント治療が出来る条件は?

インプラント治療を受けられる条件としてあげられる健康状態はもちろんのこと、インプラントを直接埋め込む歯槽骨にも条件が設けられ、それら条件を満たしていない場合には、インプラント治療を受けることが困難とされていました。埋め込むインプラントの種類や歯槽骨の状態によってその前後しますが、以下がその条件となります。

インプラント治療を受けられる歯槽骨の条件

▼厚さ・・・5mm以上

埋入後、インプラント周囲に1mm以上の厚さが確保できること

▼高さ・・・10mm以上

埋入するインプラントの高さ以上の歯槽骨

これら条件に満たない場合には、歯槽提拡大手術などの治療を行うことで、インプラント治療を受けられる可能性が広がりました。

歯槽提拡大手術

歯槽提拡大手術は、歯槽骨の厚さが足りない場合に適応される治療法の1つです。歯槽骨の厚さが十分でない場合、インプラントを埋め込んだとしても、定着することなく抜け落ちてしまう可能性があります。

そこで適応されるのが歯槽提拡大手術です。歯槽骨の厚さが4mm程度まである場合に行われる治療法であり、「サイトダイレーティング」とも呼ばれ、歯槽骨を押し広げてインプラントを埋め込む歯槽提拡大手術は、以下記載の通りに行われます。

歯槽提拡大手術の流れ

1) 2mm~2.5mm程の細いドリルを使い、歯槽頂部から穴を開けます。

2) 穴が開いた状態の歯槽骨に、ダイレーターと呼ばれる専用の器具を挿入し、歯槽骨を拡大していきます。ダイレーターは円柱形をした、スティックタイプ(棒状)の医療器具であり、細いダイレーターから徐々に太いダイレーターを入れ替えて、歯槽骨を拡大していきます。

また、この時ボーンスプレッダーと呼ばれるスクリュー状の器具を使用する場合もあります。

3) 徐々にダイレーターを太くしていき、十分な厚みは確保できたのを確認した後に、インプラントを埋め込みます。

歯槽提分割術

歯槽骨の厚さが3mm以下になってしまうと、上記でご紹介した歯槽提拡大手術では対応することが困難となり、代わりにこれよりご紹介する歯槽提分割術が適応となります。

歯槽提分割術はスプリットクレストとも呼ばれ、主に上顎前歯に適応されることの多い治療法であり、上顎前歯は臼歯に比べると歯槽頂から鼻腔底や上顎洞まで距離があるが、歯槽骨の先端部分で前歯が維持されているために、歯が抜けてしまうと歯槽骨は吸収され非常に薄くなる傾向にあります。

そのため、前歯が抜けてしまった場合にはインプラント治療は適応されないケースも多く見受けられますが、歯槽提分割術を施すことで、インプラント治療を受ける可能性があります。

歯槽提分割術は、以下記載の通りに行われます。

歯槽提分割術の流れ

1) 幅を広げたい歯槽骨の部位に、超音波医療機器であるピエゾサージェリーで切り目を入れます。

2) 切れ目の隙間にボーンスプレッダーと呼ばれる器具を使い、歯槽骨を拡大して行きます。

3) 十分な幅が確保できたら、インプラントを歯槽骨に埋め込みます。

このように、以前はインプラント治療を行えいと諦めていた患者さまでも、「歯槽提拡大手術」や「歯槽提分割術」などの骨拡大治療を行うことで、インプラント治療を受けられるようになりました。

骨拡大治療だけじゃない?骨造成術でインプラント

歯槽骨の厚さが足りない場合には、上記でご紹介してきた骨拡大治療である、「歯槽提拡大手術」や「歯槽提分割術」が適応されますが、歯槽骨の高さが足りない、骨量が足りないなどの場合には以下の治療法が適応されます。

骨造成(自家骨移植)

自身の下顎オトガイ、腸骨、肋骨などの骨を歯槽骨に移植する方法です。入院を伴う手術が必要になります。

人工骨を移植する骨造成

人工の骨を移植する方法です。

GBR(骨再生誘導法)

歯肉と歯槽骨の間に人工膜であるメンブレンを設置し空間を作り、その空間に粉砕された自身の骨や人工骨を入れて、骨の再生を促す方法です。

ソケットリフト法

歯槽骨の高さが5mm以上ある場合に適応される治療法です。上顎臼歯部に適応される方法であり、歯が存在した部位、抜歯窩から移植する自身の骨、または人工骨を押し入れ、シュナイダー膜を押し上げ高さを確保する方法です。

サイナスリフト法

歯槽骨の高さが5mm以下の場合に適応される治療法です。上顎臼歯部に適応される方法であり、上顎洞内に骨移植を行い、高さを確保する方法です。

まとめ

今回は、通常のインプラント治療を行うことができないと判断された人でも、インプラント治療を受けることができるための治療法をご紹介して参りました。「骨が足りない」と、インプラント治療を断念された患者さまでも、インプラント治療を受けられる可能性があるため、「インプラント治療」をお考えの場合には、お気軽にご相談ください。