基礎知識

インプラント治療には歯科衛生面が重要?

20.05.20

インプラント治療に限らず歯科治療において、歯科衛生管理はとても重要なもので
あります。特にインプラントは歯肉をメスで切開し、顎の骨である歯槽骨に専用ドリルで
穴を開けて、直接インプラントを埋め込む治療が必要なため、歯科衛生面に優れた環境下
での治療が望ましいとされています。インプラント治療を受ける際には、歯科衛生面に配
慮されているかどうか、治療を受ける歯科医院を選ぶ際のチェックポイントの1つとする
と良いでしょう。そこで今回は、歯科衛生面について、詳しくご紹介してまいります。

歯科治療における感染症

歯科医院では院内感染を防ぐためにも、常に清潔な状態を保てるように努めています
が、歯科治療では患者さまのお口のなかで直接治療をおこなうため、唾液、血液、削り屑
などからによる感染症が懸念されています。患者さまに安心して治療を受けてもらうため
には、感染予防対策はとても重要なものであります。

感染症の種類

歯科治療における主な感染症は以下の通りです。

▼血液感染

血液や体液を介して感染症が感染することを、血液感染といいます。主な感染症として、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト免疫不全ウイルスがあげられます。
歯石を除去するスケーリングや虫歯治療、歯周病治療といった一般的な治療においても出
血をともなうことが多くあります。歯肉を切開して、顎の骨である歯槽骨に穴を開ける外
科手術が必要となるインプラント治療の場合には、出血がともなうことは明白であり、使
用した歯科医療器具には、患者さまの血液や唾液(分泌物)が付着しています。
それらを適切な処置で洗浄・消毒・滅菌することなく、歯科医療器具を他の患者さまに使
い回しすると、歯科医療器具を通して血液感染してしまいます。

▼飛沫感染

くしゃみや咳などの直系5μm以上の粒子の「飛沫(ひまつ)」を直接吸い込むことによっ
て感染症が感染することを、飛沫感染と言います。主な感染症として、風邪(ライノウイ
ルス・アデノウイルス)、インフルエンザ、おたふくかぜ、風疹、マイコプラズマ、RSウ
イルス、百日咳などがあげられます。
お口の中には常に300~400種類の細菌が存在すると言われています。歯科治療では、歯を
削る際に、お口の中の常在菌や虫歯菌・歯周病菌、歯や金属の削り屑、さらには血液や唾
液が空気中に飛び散るため、歯科医院内は常に飛沫感染するリスクをともないます。
飛沫感染するリスクを最小限に抑えるためには、口腔外バキュームが効果的とされ、多く
の歯科医院で導入され始めています。お口のなかで、唾液や水、血液や分泌液を吸う口腔内バキュームと合わせ、お口の外に口腔外バキュームをセットして、治療過程で飛び散る飛沫を吸い取り感染を防ぎます。

▼空気感染

飛沫によって空気中に放たれた直径5μm以下の粒子を吸うことで感染症に感染することを
、空気感染と言います。主な感染症は、はしか、水疱瘡、結核、レジオネラ肺炎などがあ
げられます。
飛沫感染でもお話ししたように、歯科治療において感染源を飛沫させることは避けられな
いことであり、空気中に感染体である粒子の放出を防ぐことは困難であります。空気の入
れ替えや、空気中に含まれる粉塵や細菌を除去するエアクリーナーを設けたり、歯科医院
ではパーテーションで診療室を分割したり、個室を設けるなどの対策が取られています。

感染症の三大要因

感染症を防ぐためには、病原体、感染経路、宿主の感受性の3つの三大要因が揃うこと
を防ぐ必要があります。感染症を防ぐためには、それぞれの特性に沿った対策が必要とな
ります。

▼病原体(感染源)
  病原体(感染源)の早期発見・治療・消毒(除去)

▼感染経路
  感染経路である血液感染・飛沫感染・空気感染を防ぐために、徹底した滅菌・消毒・
マスク・グローブ(手袋)・エプロンなどのディスポ-ザブル(使い捨て)の徹底

▼宿主の感受性
  手洗い、うがい、予防接種に加え、十分な休息、栄養、運動

インプラント治療における歯科衛生面は?

インプラント治療は外科手術です。一般的な外科手術を衛生管理された手術室でおこ
なうことが当たり前のように、インプラント治療においても、衛生管理された専用の手術
室でおこなうことが望ましいと考えられています。
虫歯治療などをおこなっている横で、インプラント治療をおこなうことは、衛生管理され
ているとは言えず、感染症に罹患するリスクも高まります。
しかし、インプラント治療専用の手術室を設けている歯科医院は徐々に増えていますが、
まだまだ十分な環境を整えられている歯科医院ばかりではありません。インプラント治療
をおこなう診療台の徹底した衛生管理をおこない、インプラント治療をおこなう時間と一
般治療をおこなう時間を区切るなどの対策をおこなう必要があります。

▼専用の治療スペース
  インプラント治療専用の手術室を設けている、または、一般治療とインプラント手術
をおこなう治療時間を区切るなどの対策をおこない、清潔な空間を確保し、衛生管理
をすることが望ましく、感染症の対策となります。

▼専用器具の洗浄・消毒・滅菌管理
  徹底した洗浄・消毒・滅菌管理された専用器具を用いたインプラント治療が望ましく、感染症を防止します。また、インプラント自体も工場で滅菌管理されたものを歯槽骨に埋め込む直前に取り出して使用するため、徹底的に衛生管理されています。

▼手術着・帽子の着用
  一般治療で着用する白衣とは別に、滅菌された手術着や帽子(手術キャップ)を着用
することが望ましく異物混入や感染を防ぎます。

▼ディスポ-ザブル(使い捨て)の徹底
  マスクの着用はもちろんのこと、患者さまごとにグローブ(手袋)などのディスポ-
ザブル(使い捨て)の徹底をおこない、感染症を防止します。

まとめ

以上、今回はインプラント治療における歯科衛生面について詳しくご紹介して参りま
した。インプラント治療を成功させるためには、歯科医院の衛生面に対する考えや対策も
左右されるため、インプラント治療をお考えの際には、歯科衛生面の対策をおこなってい
るか、ホームページなどで確認することをおすすめいたします。インプラント治療をお考
えの際には、お気軽にご相談ください。