インプラントコラム
COLUMN
無歯顎の方にはどのようなインプラント治療があるのでしょうか
19.06.07
歯が一本もない状態を専門用語で「無歯顎」と言います。歯が全くない状態で噛む機能を取り戻す治療と言うと、ほとんどの方が総入れ歯を選択することと思います。しかし無歯顎の方の治療は総入れ歯だけではなく、インプラントという選択肢もあるのです。では無歯顎の方のインプラントには、どのような治療法があるのでしょうか。
総入れ歯の問題点とは
歯を全て失ってしまった場合、そのままにしておくと非常に多くのリスクを抱えることになります。体の健康はしっかりと噛んで食事を行うことが基本であるため、まずは噛む機能を取り戻さなくてはいけません。その第一選択肢として挙げられるのが、恐らく総入れ歯です。総入れ歯は保険適用のため、保険診療を行っている歯科医院であればどこでも作製が可能です。また年齢制限もなく、通院が困難な方でも作製することができるという、大きなメリットを持っています。
しかし実際に総入れ歯を使って食事を行っていると、様々な問題点が浮き彫りになってきます。その最も大きな問題点は、しっかり噛めないことです。作製当初はぴったりと合っていても、だんだんと顎の骨が吸収されていくため少しずつ密着度が悪くなってしまいます。そのためしっかりと噛めず、ガタガタして食事どころか会話の最中でも入れ歯が外れそうになってしまいます。入れ歯の調整を行っても、すぐに合わなくなってしまうため、何度も調整が必要となってしまいます。それでも満足に噛むことができないという声がほとんどです。
総入れ歯の噛む力は、天然歯と比べて10%程度と言われています。しっかり噛むことができないと食事が満足にできません。合わない入れ歯では食事ができないため、入れ歯を外して歯ぐきだけで食べ物をすり潰す方も少なくありません。しっかり噛めないと、脳の活性化にも影響が出るため、認知症を引き起こす可能性も出てきます。
このように、安価で簡単に治療ができる総入れ歯ですが、問題が非常に多い治療法であるのが大きな欠点です。自費の総入れ歯もありますが、素材は優れているものの、やはり噛む力が弱いという欠点を併せ持っている感が否めません。
無歯顎の方向けのインプラントとは?
では無歯顎の方は、総入れ歯を我慢して使うしかないのでしょうか。実は、歯を全て失った方でもインプラント治療は可能なのです。では無歯顎の方にはどんなインプラント治療があるのでしょうか
インプラントオーバーデンチャー
インプラントオーバーデンチャーとは、外科手術を行って顎の骨に2~4本のインプラントを埋入し、アタッチメントと呼ばれる特殊な部品で入れ歯を固定する治療法です。入れ歯がインプラントによってしっかりと固定されるため、食事がし辛いということはありません。また会話中に外れることもないため、笑顔で会話が楽しめます。安定感にとても優れており、しっかり噛むことができるインプラントオーバーデンチャーは、これまで使っていた入れ歯を使用することも可能です。
埋入するインプラントがとても多いのでは?と不安に思われるかもしれませんが、使用するインプラントは2本から4本と少なく、手術による体への負担も少なくて済みます。
インプラントオーバーデンチャーは、従来の総入れ歯が持つ不安定な要素を払拭し、食事や会話を楽しめる優れた治療法であると言えます。
オールオン4
オールオン4とは、片顎の歯または両顎の歯が全くない無歯顎の方のためのインプラント治療です。4本のインプラントを斜めに打ち込んで、10本の人工歯を支えることで、噛む機能を取り戻します。従来の方法は、片顎につき10本のインプラントを打ち込む必要があり、体と費用にたいへん負担がかかるものでした。オールオン4が導入されるたことで、このような負担が大幅に減り、しっかり噛める歯を取り戻すことができるようになったことは、総入れ歯に苦労している方にとって大変朗報と言えます。
また手術した日に仮歯を装着することができるため、その日から軽い食事を行うことができます。完成品のブリッジが装着されるまでの間の見た目も心配する必要はありません。
ただしオールオン4を導入している歯科医院はそれほど多くないため、オールオン4治療を希望する場合は、オールオン4の実績の高い歯科医院を選ぶ必要があります。
ボーンアンカードフルブリッジ
少々難しい名称のこの治療法は、5本以上のインプラントを顎の骨に埋入し、ボーンアンカーと呼ばれるブリッジを固定するインプラント治療法です。
ボーンアンカードフルブリッジは、無歯顎用インプラント治療の中でも歴史が古く、信頼性が高い治療法です。
下顎の入れ歯がすぐに動いてしまう方にとても適しており、ガタガタせずにしっかり噛めることが大きなメリットです。ブリッジの構造がシンプルなため、安定性が高いことも支持される理由です。
特に若い年齢で入れ歯になってしまった方に適していると言えるでしょう。
ただし少ない本数のインプラントと同様、顎の骨とインプラント体の結合が確認されるまでに時間を要し、その間は入れ歯を装着して過ごすことになります。合わない入れ歯の場合、完成までの間に食事がし辛いことがデメリットと言えます。
このように、歯を全て失ってしまった無歯顎の方も、インプラント治療は可能です。どの治療法を選択するかは、患者様の状態によって異なり、歯科医院によっても導入している治療法が異なります。
どの治療法も、インプラント周囲炎にならないためにメンテナンスが必要
無歯顎の方も、ご紹介したようなインプラント治療で総入れ歯の問題点を解消し、快適な毎日を取り戻すことが可能となることでしょう。
ここで大切なことは、きちんとメンテナンスを受けることです。インプラント治療後は、定期的なメンテナンスを受けていたくことで、健康なお口の中を維持することができますが、メンテナンスを怠ってしまうと、インプラント周囲炎という、歯周病に似た症状を引き起こしてしまいます。インプラント周囲に汚れが溜まり、そこへ歯周病菌が棲みついて毒素を出し、歯ぐきに炎症が起きてしまいます。炎症が歯槽骨まで広がってしまうと、インプラントを支えている顎の骨が薄くなってインプラントが揺れ動いてしまいます。さらに炎症が進むとインプラントが脱落し、再治療が難しくなって総入れ歯に逆戻りしてしまいかねません。これでは費用と時間が無駄になってしまいます。総入れ歯で噛めない生活に戻ってしまうと、精神的にも辛い思いをしてしまうことが考えられます。
このようなことにならないためにも、インプラント治療後は定期的なメンテナンスを必ず受けるようにして下さい。
またどの治療法が適しているのか、担当医とよく相談することが大切です。年代や顎の骨の状態に応じて、最も適した治療法を選択することで、再び噛める喜びを味わうことができることは、今後の生活を送るうえでとても大きな意味を持つと言えるのではないでしょうか。