基礎知識

インプラントの難症例とは?インプラントの理解を深めよう

19.09.06

インプラント手術は、顎の骨である歯槽骨に直接穴をあけて、インプラントを埋め込む治療法であり、入れ歯やブリッジと並ぶ、歯を失った際の治療法の1つとして広く知られています。しかし、インプラント治療は誰もが受けられるわけではなく、精密検査を行い歯科医師にインプラント手術に適応すると判断され初めてインプラント手術を受けることが可能となります。そこで今回は、インプラント手術の中でも難しいとされる、難症例を詳しくご紹介していきましょう。

一般的なインプラント症例は?

まずは、一般的なインプラント手術の症例を確認しましょう。精密検査の結果、インプラント治療が適応されると判断された場合には以下の通りにインプラント手術が行われます。

①麻酔を打ち、歯肉を切開

インプラントを埋め込む部位に麻酔を打ち、歯肉をメスで切開します。麻酔の効き目を待ってから歯肉にメスを入れる為、痛みはありません。

②歯槽骨に穴をあける

インプラント体(人工歯根)を埋め込むために、ドリルで歯槽骨に穴をあけます。

③インプラント体を埋め込む

穴をあけた歯槽骨に専用の器具を使用して、インプラント体を埋め込み、カバースクリューを装着します。

④インプラント体と歯槽骨の結合を待つ

歯槽骨とインプラント体の結合には2ヶ月から3ヶ月の期間を要します。治癒期間はインプラントメーカーや、患者さまの状態によって前後しますが、下顎より上顎の方が、治癒期間が長くなる傾向にあります。

⑤アバットメントを装着する

人工歯の土台となるアバットメントをインプラント体に装着します。

⑥人工歯の装着

仕上げに、アバットメントに人工歯を装着してインプラント治療は完了となります。

インプラント難症例とは?

インプラントは、歯槽骨の量や質、高さや幅などが足りないと診断された場合、治療を受けることが出来ないケースも少なくありません。しかし、近年ではそういった難症例に対応する治療法が確立され以前「インプラント治療は困難」と診断された患者さまでも、インプラント治療を受けられる可能性が広がりました。難症例に対応する主な治療法は以下の通りです。

【難症例に対応する治療法】

▼GBR法
▼サイナフリスト法
▼ソケットリフト法
これらの治療法は、粉砕した患者さま自身の骨もしくは厚生労働省に認可された人工代用骨を移植し、足りない歯槽骨を骨造成させます。更なる高度な技術が必要となるため、インプラント治療を行う骨造成治療に対応している歯科医院は限られています。

インプラント難症例1:歯槽骨の幅が足りない

歯槽骨の幅が足りないと診断された場合には、GBR法が適応されます。歯槽骨は、歯から伝わる刺激を受けなくなると痩せてしまう特性があり、歯が抜けてから長い年月が経過している状態でインプラント治療を行う場合、歯槽骨の幅が足りないと診断されるケースも少なくありません。
歯槽骨の幅が足りない場合に適応されるGBR法は、2通りの方法があります。1つ目の方法は歯槽骨の幅が足りない部分に、粉砕した患者さま自身の骨(自家骨)、もしくは厚生労働省に認可された人工代用骨を移植し、その上から人工膜を被せ歯槽骨の再生を待ち、歯槽骨がインプラント体を埋入できる幅になるまで、個人差はありますがおよそ6ヶ月の治癒期間を設け、人工膜を除去しインプラント体を埋入し、人工歯を装着し治療が完了となります。
2つ目の方法は、インプラント体埋入と同時に行うGBR法であり、歯槽骨の幅が少し足りない場合に適応される治療法です。インプラント体を埋入位置に移植し、粉砕した患者さま自身の骨もしくは人工代用骨を、インプラント体を覆うように移植し、更にその上から人工膜を覆いピンで固定します。3~6ヶ月の治癒期間を設けた後、人工膜を除去し人工歯を装着して治療は完了となります。

インプラント難症例2:高さが5mm 以上あるがまだ十分に足りない場合

上顎臼歯を支える歯槽骨の幅は問題ないが、高さが5mm 以上あるがまだ十分に足りない場合に、約3mm高さを上げるために行う治療法がソケットリフト法です。
歯槽骨にインプラント体を埋入する穴をあけ、ピエゾサージェリーと呼ばれる専用器具を使用して骨を除去し、上顎洞と歯槽骨の間に位置する粘膜のシュナイダー膜を露出させます。次に、患者さま自身の血液から作成したフィブリンゲルと呼ばれる修復因子が含まれたジェル状の物質を濃縮したCGFと、粉砕した患者さま自身の骨、または人工骨を移植し、更にインプラント体を同時に埋入し歯槽骨の再生を待ち、人工歯の装着を行い治療が完了となります。
自身の血液から作成されたCGFを使用することで、感染リスクを大幅に低減させることが期待でき、インプラント体を埋入する穴をあけるのみとなるために、患者さまの負担は少なく、比較的治癒期間も短い治療法となります。(場合によっては2回に分けるケースもあります。)

インプラント難症例3:歯槽骨の高さが4mm以下の場合

歯を支える役割のある歯槽骨の高さが4mm以下であった場合に適応されるのが、サイナスリフト法です。目の下、鼻の横周辺に位置する上顎洞の側面をあけ、そこから粉砕した患者さま自身の骨、または人工骨を移植し、歯槽骨の再生を待ちます。十分な高さを確保できた後、インプラント体を埋入し、更に歯槽骨とインプラント体の結合を待って、人工歯の装着となります。(サイナスリフト法もインプラント埋入と同時に行うケースもあります。)

まとめ

今回は、インプラント治療における難症例についてご紹介してまいりました。現在のインプラント治療が確立され50年以上が経過した現在もインプラント治療の技術は向上し続けています。

以前は困難であった難症例であっても、今回ご紹介した治療が適応される場合には、以前「骨の量が足りない」と診断され、インプラント治療を断念した人、歯を失ってから長期間経過しているためにインプラント治療を諦めてしまっている人も、インプラント治療を行える可能性が広がります。インプラント治療をお考えの場合には、お気軽にご相談ください。